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酒の歳時記(さけのさいじき)ここに極まり!四季折々の日本酒と食の楽しみ方

神無月:案内人・田中秀嗣&悦子(東京・六本木「さかなのさけ」店主&料理長)

きのこのおひたし

料理長の悦ちゃんに秋の到来を告げる食材は、サンマ、サバ、そして山の恵みのきのこ。9月下旬から届き始めた天然きのこは、厨房に立つ悦っちゃんを小躍りさせるほど豊かな風味をたたえている。
「今年はとくに状態がいいようなんです」と悦っちゃん。青森の野菜屋さんから届く天然きのこは、椎茸、舞茸、ひら茸、なら茸、かのか……何が届くかは箱を開けてのお楽しみ。「きのこを待ち遠しいと思うようになったのは、東京に来てから。東北のものだから関西まで入ってこなかったのか、大阪ではあまり注目していなかったのよ」。
とりどりのきのこを鰹と昆布のだしでさっと煮る。味つけはごく薄味、きのこはちゃんと火が通っているけれど、パリッとした張りが残っている状態が頃合いだ。じんわりと冷めるほどにきのこの中にだしの旨味がしみこんで、絶品おひたしは完成となる。
器に盛られた山の宝、つやつやのきのこたち。山のプロが採取したきのこは風味が濃厚で、“天然きのこは鮮度が命”ということがストレートに伝わってくる。そのきのこの滋味がとろんと溶け出したひたし汁の旨いこと、旨いこと。「不思議なことにこのきのこを煮ると、ひたし汁がまるで貝のおすましのような味わいになるのよ」と悦っちゃん。
そんな繊細なおいしさを引き立てる日本酒は、「コクがあって甘すぎず、押しが強すぎない純米酒が合います」と田中さん。田中さんのセレクションの一つに、“心に迫ってくる旨さ”というのがある。料理を食べている手がすーっと伸びる穏やかな個性の酒がいい、というのが持論だ。「うちは2銘柄くらいしか置いていませんが、きのこと同じ地域に育った東北の酒を合わせてみるのも面白いかもしれません」。
きのこをつまみつつ、酒を味わう。食べ尽くしたら、ひたし汁を肴に酒を味わう。ひたし汁を飲み干した頃には、日本の秋に、山の幸に感謝していること必至である。

■ 案内人 田中秀嗣(たなか ひでつぐ)&悦子(えつこ)

1978年の長野。大阪から来ていた田中秀嗣さんと東京から来ていた悦子さんは諏訪で出会い、気がついたら所帯をもっていたそう。食道楽・大阪の食文化は悦子さんにカルチャーショックを与えると同時に食いしん坊に火をつけ、やがて夜な夜な集まる食いしん坊仲間のために腕をふるうように。「安く、手早く、おいしく」の容赦ない洗礼を受け、悦子さんの料理の腕前はめきめきと上達。一方、秀嗣さんは折からの大吟醸ブームで日本酒の旨さに開眼し、日本酒ノートを片手に飲み歩き、ついには自宅に酒用冷蔵庫を設えてしまうほどハマる。やがて2人の考えは一つにまとまり、1987年8月、大阪・船場に「さかなのさけ」をオープン。21世紀に入り、17年3カ月に及ぶ歴史をいったん閉じて、2004年11月に東京・六本木に移転。カウンター席12席の小さな店は、お二人の人柄を目当てに集まる人々で賑わっている。

●さかなのさけ(さかなのさけ)
東京都港区六本木3-8-3
phone 03-3408-6383
[営業]18:00~23:00 入店
[休]日曜・祝日・月曜
※事前に電話確認を


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