寒さが日ごと募るようになると、いよいよカワハギの出番である。
「身に旨味がある白身魚なので夏場もさっぱりとおいしいのですが、肝を味わえる冬のカワハギは別格」とキッパリ。そう語る神崎さんによると、魚の肝は肥えて脂のりがよくなると独特の匂いが消え、旨味がぐっと増すそうだ。「カワハギの薄造りにはよくポン酢が添えられますが……、酒飲みの心をくすぐるのは肝和えでしょう」。丁寧にたたいた胆は、実になめらか。それを自家製の土佐醤油で調味し、薄造りを和える。よく酒と相性のいい味は炊きたてご飯にも合うと言われるが、そして大抵の場合それは当たっているが、このカワハギの肝和えは例外中の例外の筆頭だろう。酒で味わわずにしてどうしたものか。許されるものなら器さえ舐めたいほどの旨さ。「うちでは千葉・竹岡産などの関東ものも扱っていますが、“海のフォアグラ”と呼べるような上質な肝を抱えているカワハギは、九州産など西の方で獲れるものに多い」という。
「カワハギの肝は旨味が濃厚なのですが、口ざわりはさらっとしています。ですから生原酒などのガツンとした強さをもつ酒よりも、純米系の吟醸香にとても合います。純米酒、やわらかい生酛造りなどがお薦めです」。ぐっと冷え込んだ晩などは、ぬる燗もいいと神崎さん。旨さがノッた旬の味わいと、その味わいを増幅する日本酒。心の凝りをほぐしてくれ、豊かな気持ちになれる今限定の組み合わせである。
■ 案内人 神崎 康敏(かんざき やすとし)
1966年生まれ、埼玉県出身。20歳の頃、大吟醸を味わわせてもらったことで、日本酒の奥深さに開眼。その旨さの魅惑に惚れこむ。32歳の頃、新規開店の立ち上げから関わった居酒屋で日本酒担当となり、日本酒の文化に目覚める。2002年に独立、同店を構える。テーマは日本酒と魚。人から人へ、顔の見える仲を繋ぎながらやってくる魚には手間を惜しまず、ワタはもちろん骨や皮まで、可能な限り味わい尽くせるような調理を施す。夜な夜な酒呑みたちに口福を与えている。
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●萬屋 おかげさん | ||








