いきなりだが、卵が一年で一番おいしいのはい~つ~だ?
実は、卵は春がもっともおいしいといわれている。というのも、ニワトリは家禽だが、冬場は活動がにぶくなって生育が遅くなり、卵を産まくなったりするのだという。そして春を迎えると動きは活発化し、卵をどんどん産み始めるのである。「当然、春になると肉質もおいしくなります。そういうこともあって、なぜか鶏が食べたくなります」というのは工藤さん。数ある鶏料理の中からピックアップしたのは「シャモロックの手羽先」という名前の燻製料理だ。シャモロックは、正式名称を青森シャモロックといい、自然のままに放し飼いし、じっくり時間をかけて育てる青森県産の地鶏である。濃厚な旨味、繊細な肉質、おいしい弾力など、その味わいで料理人の心をとらえている。
「桜チップにほうじ茶をブレンドしていますから、日本酒にとても合いますよ」と秘密を開示してくれたのは佐久間さん。ほうじ茶を加えると、香ばしさの中にマイルドな甘さが育まれ、鶏の脂もきれてすっきりとした味わいに仕上がる。「ほうじ茶の香りが決め手なので、うちではほうじ茶も緑茶から自家焙煎しています」と笑う。
たまらない香りに促されて手づかみで頬張れば、程よい燻香、鶏の旨味、絶妙な塩加減が相まって、酒を誘う。「どんな酒にも合いますが、たとえば冷たい微発泡酒とか、酸味に深みのある熟成酒など、香りをキーワードにして酒を選んでみてはいかがでしょう」といいながら工藤さんが薦めてくれた酒をごくり。うーん、これぞ甘露なり。食べて、手を拭って、酒を飲んで。ずっと続けていたい“ラビリンス”にハマること請け合いだ。
■ 案内人 工藤卓也(くどう たくや)&佐久間辰男(さくま たつお)
店主の工藤氏は1972年生まれ。料理長の佐久間氏は1968年生まれ。2人が出会ったのは15年ほど前の鴨川グランドホテル。ホールと厨房に分かれていたものの意気投合、それぞれの天賦の才を発揮できる持ち場で修行に励む。5~6年後、別々の道を歩み始めるが、友情は健在。その後、工藤氏は彼が“酒の伝道師”としての頭角を表す茅場町にあった居酒屋の店長となるが、独立を決意。約2年半に及ぶ紆余曲折時間を経て、2006年に同店を構える。一方、その頃の佐久間氏は大手飲食店に勤務中。腕の確かさから、当然ながら重責に就いていた。3年ほど続いていた工藤氏からのラブコールは熱烈度を増し、遂にオープン半年後に佐久間氏も合流。ひらめき型の工藤氏との距離感も絶妙で、“猛獣使い”の異名をとる。酒を進める旨い料理と、そんな料理に寄り添うきれいな酒を楽しめる心地よい店として、夜な夜な酒好きで賑わっている。
●井のなか(いのなか)
東京都墨田区錦糸2-5-2
phone 03-3622-1715
[営業]17:00~22:30(L.O.)
[休]日曜・祝日
※予約が望ましい





