dancyu×日本酒.com

(本文ここから)

酒の歳時記(さけのさいじき)ここに極まり!四季折々の日本酒と食の楽しみ方

文月:案内人・工藤 卓也(東京・錦糸町「井のなか」店主)・佐久間 辰男(東京・錦糸町「井のなか」料理長)

夏野菜と牛肉のたたき

かき氷、すいか、心太(ところてん)に素麺。そして、トマトやきゅうりなどの夏野菜は氷水で冷やしただけでご馳走になる。“ひんやり”が恋しい季節も、いよいよ本番だ。すると「井のなか」の本日のきまぐれ料理に登場し始めるのが「夏野菜と牛肉のたたき」。色とりどりの野菜と牛もも肉におろしポン酢醤油をたっぷりかけて味わう、涼感あふれる一皿である。
「口の中がさっぱりする酸味は夏に喜ばれる味覚ですが、日本酒にとって料理の酸味は、酒の味や印象を変えてしまうほどの影響力を秘めています。もちろん、日本酒そのものにも酸味はあります。酒の酸味は穀物由来なので、料理に果物や野菜の酸味を使うようにすると、食材がもつ自然な甘味が引き出されて日本酒といい関係を築けます」と佐久間さん。さらに、酸味の強いトマトはそれだけでは日本酒と合わなかったりするが、ポン酢醤油のゆず果汁の力で甘みが立つようになるという。佐久間さんは“酸味のマリアージュ”で、料理と酒の距離をぐっと縮めてくれているのである。
「ぜひ一緒に味わってみてほしいのが活性にごり酒とか発泡系どぶろく。それも、少し酸味のあるタイプがお薦めです。いろいろ試したのですが、ポン酢の酸味と合うだけでなく、薬味のみょうがとの相性もすこぶるいい」というのは工藤さんだ。ここ数年、夏限定で販売される日本酒が徐々に増えているが、今年あたりは夏向きのにごり酒やどぶろくも多く出ているという。
ところで、このきまぐれ料理には肉違いのバリエーションがある。スープごと固める冷やし鶏、茨城・かくま牧場の豚の冷しゃぶ。いずれも、しっとりなめらかな牛肉の旨さに負けない、魅力的なおいしさをたたえている。愛でて味わい、余韻に酔いしれる。冷製料理で「ああ、夏だなぁ」を満喫しようではないか。

■ 案内人 工藤卓也(くどう たくや)&佐久間辰男(さくま たつお)

店主の工藤氏は1972年生まれ。料理長の佐久間氏は1968年生まれ。2人が出会ったのは15年ほど前の鴨川グランドホテル。ホールと厨房に分かれていたものの意気投合、それぞれの天賦の才を発揮できる持ち場で修行に励む。5~6年後、別々の道を歩み始めるが、友情は健在。その後、工藤氏は彼が“酒の伝道師”としての頭角を表す茅場町にあった居酒屋の店長となるが、独立を決意。約2年半に及ぶ紆余曲折時間を経て、2006年に同店を構える。一方、その頃の佐久間氏は大手飲食店に勤務中。腕の確かさから、当然ながら重責に就いていた。3年ほど続いていた工藤氏からのラブコールは熱烈度を増し、遂にオープン半年後に佐久間氏も合流。ひらめき型の工藤氏との距離感も絶妙で、“猛獣使い”の異名をとる。酒を進める旨い料理と、そんな料理に寄り添うきれいな酒を楽しめる心地よい店として、夜な夜な酒好きで賑わっている。

●井のなか(いのなか)
東京都墨田区錦糸2-5-2
phone 03-3622-1715
[営業]17:00~22:30(L.O.)
[休]日曜・祝日
※予約が望ましい


(本文ここまで)