神崎さんが待ちに待ったメジマグロの季節がやってきた。
待ち焦がれていたのは、富山・氷見に水揚げされるメジマグロ。氷見といえば寒鰤の旨さで知られているが、その定置網にかかるメジマグロが最高に旨いのだ。「メジマグロは身が明るいピンク色で、全体に脂がのっています。太平洋岸より日本海岸、中でも氷見、新潟・佐渡、そして山口・萩で獲れるものは脂のりがとくにいいです」
メジマグロは本マグロの幼魚で、関西ではヨコワとも呼ばれる。体長1m以下の本マグロをさすが、神崎さんが市場から引いてくるのは3㎏くらいの小ぶりのもの。その理由は藁あぶり刺にある。「藁が燃える強い炎で瞬時にあぶるので、この手法は火の入り方が柔らかい。身が大きくて厚いと、藁あぶりによる魅力を十分に生かしきれず、旨味を引き出しにくいんです」とのこと。ハラスには塩を強めに満遍なくふって藁あぶりにし、サク取りした身は湯引きしてからづけにする。本鮪ならではのキメ細かな肉質から、ハラスは塩の軽快さを、身からは醤油のコクをまとった旨味がじわり解け出す。
「メジマグロの脂はあっさりとしてキレもありますが、脂のりはかなりのもの。こういう魚には生酛系や純米酒のちょっと熟成させたタイプの燗酒が合います。米の旨味や甘味、そして風味がもっとも開くのがぬる燗の40℃。個人的にはもう少し低めの人肌燗の35~38℃の酒で味わいたい」と神崎さんは目を輝かす。脂がのった魚を燗酒で楽しむと、それぞれの旨味が互いにおいしさを高め合い“旨味の層”が厚くなるという。ともに味わうだけで、幸せになることが約束されている組み合わせなのである。
■ 案内人 神崎 康敏(かんざき やすとし)
1966年生まれ、埼玉県出身。20歳の頃、大吟醸を味わわせてもらったことで、日本酒の奥深さに開眼。その旨さの魅惑に惚れこむ。32歳の頃、新規開店の立ち上げから関わった居酒屋で日本酒担当となり、日本酒の文化に目覚める。2002年に独立、同店を構える。テーマは日本酒と魚。人から人へ、顔の見える仲を繋ぎながらやってくる魚には手間を惜しまず、ワタはもちろん骨や皮まで、可能な限り味わい尽くせるような調理を施す。夜な夜な酒呑みたちに口福を与えている。
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●萬屋 おかげさん | ||








