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酒の歳時記(さけのさいじき)ここに極まり!四季折々の日本酒と食の楽しみ方

葉月:案内人・工藤 卓也(東京・錦糸町「井のなか」店主)・佐久間 辰男(東京・錦糸町「井のなか」料理長)

限定!メンチカツ

暑い夏こそガツンッと食欲! 清涼感を求めてばかりでは腹に力が入らないし、残暑を乗り切るためにもパワー不足は避けたいもの。そんなポジティブな人々に愛されているロングセラーが、「井のなか」のメンチカツだ。一年中味わえるグランドメニューだが、「ビタミンB1が豊富な豚肉は、夏のスタミナとしてとくに頼りになる食材です」と工藤さん。「うちのメンチカツは“熟成”させていますから、肉がさっぱりとして旨いんです」と、自信を漲らせる。というのも、工藤さんは“井のなかメンチ”を長い試行錯誤の末に編み出したご当人。奮起させたのは、とある店で食べたメンチカツ。評判とのギャップに驚かされたことが、工藤さんを「メンチ道」へいざなったのである。
メンチカツの主材料は茨城・かくま牧場の豚ひき肉、横須賀・長島農園の有機栽培の玉ねぎとにんじん。工藤さんに「この食材との出合いがなかったら、思いつかなかった」とまで言わしめたゴールデン・トリオである。豚肉は若いロース肉に限定していて、塩、胡椒などで下味をつけてからねかせる。驚くべきは玉ねぎとにんじんで、これでもか、というほど細かいみじん切りにした後、純米酒に浸してこれまたねかせる。これらを合わせてこね、タネにしてからもさらにねかせること数日間。これらの熟成により、さっぱりとした豚の旨味に奥行きが生まれ、存在感のある風味が育まれるのである。「1週間単位で仕込みますが、日々出せる量に限界があるので、限定となっています。」
熟成したタネは「フランスパンでつくるキメ細かい自家製パン粉をつけ、綿実油で揚げます。贅沢な話ですが、この油でないと、赤味肉と野菜の多い軽やかな味わいは引き立ちません」と佐久間さん。仕上げに、ソースと酸味をきかせたオーロラソースをかける。今度はこの酸味が、日本酒を誘ってくる。
「個人的に今、にごり酒に興味があることもありますが、うちのメンチカツには生酛造りのにごり酒とかがお薦めですね。生酛系の米の旨味がしっかり伝わる風味は、肉料理をがっしり受け止めます」と工藤さんは結んだ。
「井のなか」の開店は夕方17時。しかし、工藤さんと佐久間さんが店に来るのは毎朝10時頃という。その後2人は、黙々と仕込み続ける。「料理は手を抜こうと思えばいくらでも抜けます。でも、ちゃんと手をかければ、想像以上の旨さを返してくれます。」「旨い酒があるから、メニューは膨らむのです。」「井のなか」の居酒屋料理哲学である。その寵児“井のなかメンチ”をご賞味あれ。

■ 案内人 工藤卓也(くどう たくや)&佐久間辰男(さくま たつお)

店主の工藤氏は1972年生まれ。料理長の佐久間氏は1968年生まれ。2人が出会ったのは15年ほど前の鴨川グランドホテル。ホールと厨房に分かれていたものの意気投合、それぞれの天賦の才を発揮できる持ち場で修行に励む。5~6年後、別々の道を歩み始めるが、友情は健在。その後、工藤氏は彼が“酒の伝道師”としての頭角を表す茅場町にあった居酒屋の店長となるも、独立を決意。約2年半に及ぶ紆余曲折時間を経て、2006年に同店を構える。一方、その頃の佐久間氏は大手飲食店に勤務中。腕の確かさから、当然ながら重責に就いていた。3年ほど続いていた工藤氏からのラブコールは熱烈度を増し、遂にオープン半年後に佐久間氏も合流。ひらめき型の工藤氏との距離感も絶妙で、“猛獣使い”の異名をとる。酒を進める旨い料理と、そんな料理に寄り添うきれいな酒を楽しめる心地よい店として、夜な夜な酒好きで賑わっている。

●井のなか(いのなか)
東京都墨田区錦糸2-5-2
phone 03-3622-1715
[営業]17:00~22:30(L.O.)
[休]日曜・祝日
※予約が望ましい


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