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酒の歳時記(さけのさいじき)ここに極まり!四季折々の日本酒と食の楽しみ方

卯月:案内人・早坂登志男(東京・東高円寺「四季料理 天★」主人)

新竹の子の蒲焼

桜前線だけでなく、春は “おいしい前線”もいろいろ北上してくる。そら豆、アスパラガス、そして竹の子。豊かさの代わりに食材の旬が薄れつつあるこの頃にあって、竹の子は季節の到来を教えてくれる貴重な存在だ。
「関東に近づいて、静岡あたりまで来ると市場が落ち着いてきます。そうすると始めるのが蒲焼です」と早坂さん。九州産の初物がお目見えすると、新竹の子は春のやわらぎを楽しむ土佐煮で提供しているが、料理人の道に入って20年を数える早坂さんの真骨頂は竹の子の蒲焼なのである。
ゆがいた竹の子の根元寄りの部分を切り出し(穂先は土佐煮にする)、片栗粉をまぶして揚げる。すると片栗粉は粘りのある透明なころもと化し、竹の子の旨味をぎゅっと封じ込める。そのころもにうなぎの蒲焼のたれを塗り、炙り焼き。修業時代に覚えた味、日本酒を意識するようになって出会ったアイデアなどを織り交ぜて、早坂さんならではの竹の子料理は出来上がる。
「本醸造の力強い酒で、ぜひ。春は淡い味わいの食材が多い一方、この料理は竹の子の力強い食感を楽しめます。磨かれたきれいな味わいと米の酒らしい旨味のバランスを楽しめる本醸造は、新竹の子のほっこり感や強い甘味、軽いえぐみなどをしっかり受け止め、そして食を促してくれます」
香ばしく焼けた竹の子を頬張る。その途端、得もいわれぬ美味しさに襲われる。噛むたびにじゅわじゅわ溢れ出す旨味、初めてなのにどこか安堵を覚える風味、鼻腔を抜ける春の甘さと大地の豊かさ。ほんの一切れから、複雑かつたわわに美味しさが湧き出してくるのである。そして、本醸造をぐびり。口の中がリセットされると同時に、食欲が次なる一切れを要求する。おいしく幸せな竹の子の連鎖。この感覚こそが、早坂さんの“蒲焼マジック”なのだろう。

■ 案内人 早坂 登志男(はやさか としお)

1973年生まれ、青森県出身。中学卒業後、15歳で料理の世界に入り、23歳には和風レストランの料理長を任されるまでになる。その後、酒と料理を学ぶべく、居酒屋3軒で修業を重ねる。同時に、酒販店の勉強会などにも参加。2006年に独立し、同店を構える。“四季料理”を掲げているように、食材を通して季節感を先取りしたり、偲んだり、その日もっともおいしい料理と旨い酒を提供。定番は、故郷の青森シャモロックを使った料理。酒が進む料理ばかりだが、やわらぎ水を主人自ら提供するなど、健康的な飲酒への配慮も怠らない。そんな心憎い人柄も同店の魅力となっている。

●四季料理 天★(てんせい)
東京都杉並区梅里1-21-17
phone 03-3311-0548
[営業]18:00~23:00(L.O.)
[休]不定休
※予約が望ましい


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