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”マツザキ的”日本酒つれづれ用語帳 日本酒大辞典

【第7回】監修:松崎晴雄 文:堀越典子「思えば遠くへ来たもんだ」 ※本文中の赤字の用語にロールオーバーすると解説が表示されます。

桜咲く4月は、社会人1年生らしい人の姿をあちこちで見かけるシーズン。思い返せば四半世紀前、私にも“フレッシャーズ”と呼ばれる時期がありました。大学卒業後、就職した先はS百貨店。着慣れないスーツ姿もぎこちなく、お客様への挨拶や手早くきれいに包装する練習など、百貨店社員としてのイロハを身につけるべく奮闘していた新入社当時を、つい昨日のことのように思い出します。
 とは言うものの、フレッシャーズにあるまじき厚かましさもしっかり持ち合わせていて、まだ配属先の決まらない研修期間中から、上司に対して「食品に行けないのなら入社した意味がない」と放言する可愛げのない新人でもありました。会社のほうも、ファッションセンスのまるでない奴(私です)を服飾部門へ回す蛮勇は持ち合わせていなかったとみえ、研修明けには食品課への配属が正式に決定。最初は和洋菓子を担当していましたが、今度は「日本酒、日本酒」と念仏のごとく唱えていたおかげか、3年後には晴れて和洋酒売場へ。やがて念願のバイヤーとなり、全国のあちこちの蔵へ足を運ぶ機会にも恵まれ、種田山頭火の句ではないですが、「こんなにもおいしい酒があふれてゐる」の感を、ますます強めていったのでした。

 ・・・と、思い出話はここらで切り上げて、フレッシャーズの季節にふさわしく、皆さんにも少々“研修”を。前回は、「山廃」「生酛」「速醸」といった、いささかディープな造りの領域に踏み込んでしまいましたが、今回はより基本的な情報が並ぶ裏ラベルに注目してみましょう。

まず、原材料名や精米歩合、「アルコール度数」、「製造年月」などの表示が目に入るのではないでしょうか。ここまでは、酒税法により、必要記載事項として表示を義務づけられている範囲。さらに詳しく、原料米の品種や「日本酒度」、「酸度」、「アミノ酸度」、「使用酵母」、「杜氏名」などを列記しているラベルも少なくありません。
 この一覧は、お酒にとってまさしく履歴書のようなもの。大まかな甘辛の度合いや、味わいのタイプを知る手がかりとなってくれます。ただし、実はどんな性格で、どんな隠れた魅力の、あるいは意外なクセの持ち主なのか、履歴書だけで見抜けない点は人間と一緒。入社当時の私も、ひょっとすると「あーあ、とんでもないヤツ採っちまったなぁ」と思われていたかもしれませんね。


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アルコール度数

清酒中のアルコールを“酒精計”と呼ばれる専用の器具で計測した数値。「アルコール分」と同義。液温15℃の清酒に含まれるエチルアルコールの濃度を%(パーセント)で表示したものだが、ラベルには「~度」の単位で表示されることが多い。日本酒をはじめとする醸造酒には、水とエチルアルコール以外の成分も含まれるため、一度蒸留して水とエチルアルコールのみにしてから計測する。一般に市販されている清酒では15.0~15.9%のものが多いが、昨今は16~17%台の原酒のラインナップも充実してきた。

製造年月

清酒を製造した時期。醸造した年月ではなく、製品化する目的で瓶詰めを行った年月を表示する。

日本酒度

清酒の甘辛を示す目安として、ラベルなどに表示される数値。実際は、水に対する日本酒の比重を数値化した単位で、“日本酒度計”と呼ばれる専用の器具で測定される。液温15℃のサンプル酒を筒状のシリンダーに入れ、目盛り付きの浮秤(ボーメ)を差し込んで、液面の数値を読む。純粋の水と同じ重さを±0とし、それよりも比重が軽いものは+、重いものは-で表示される。比重は酒の糖含量に比例し、糖分が多くなるほど浮きやすく、そのぶん液面の数値も-に振れていく仕組み。逆に、糖分が少なくアルコール分の割合が多い清酒ほど下に沈むため、+の数値がアップ。このことから、一般的には日本酒度が高い(+)酒ほど「辛口」、低い(-)酒は「甘口」とされている。ただし、甘辛の感じ方は酸の多少によっても左右されるため、あくまでも目安ととらえたい。

酸度

清酒中の旨味を構成する有機酸の量を数値化したもの。有機酸の構成要素としては、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸などが代表的なところ。それぞれの量を個別に測定することは難しいため、一般的には清酒をアルカリ液で中和し、中性になったときの定量を“酸度”として表す方法がとられている。市販酒では1.0~1.8くらいの範囲に含まれるものが多く、数値が小さいほど淡麗ですっきりしたタイプ、数値が大きくなるにつれ、山廃や生酛に代表されるように、濃醇なコクとキレのメリハリを感じさせるタイプが増えてくる。

アミノ酸度

清酒中のアミノ酸含有量を、所定の測定法によって計測した数値。アミノ酸の主体は、グルタミン酸、アラニン、グリシン、バリン、アルギニンなど。料理酒に含まれるアミノ酸は、一般清酒の約4倍に相当する量。飲用としては、アミノ酸度1.0前後~1.8程度の数値を示す酒が多い。数値が低いほどすっきりと飲みやすく、高くなるほどコクや雑味を感じやすくなる傾向がある。

酵母

原料の中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスを生成する微生物。日本酒の場合は、麹が米の中のデンプンを糖化するが、その糖分をアルコールに変える働き以外に、香気成分を生成する点でも酵母が大きな役割を担っている。昔は、それぞれの蔵に棲みつく「蔵付き酵母」で酒を醸していたが、酒質が安定しなかったり、発酵不良を起こしたりといったリスクがつきものだった。こうした状況の中、明治28年に最初の清酒酵母が発見され、明治から戦前にかけて「日本醸造協会」による優良酵母の純粋培養と供給が進み、品質面でのばらつきは格段に少なくなっていった。同協会で開発された清酒酵母には、実用化され、頒布された順に番号が付けられている。現在、1号から5号までは、すでに頒布が中止されているが、「きょうかい7号」や「きょうかい9号」などの酵母は、現代の酒造りにおいても依然主流をなしている。このほか、各都道府県の試験研究施設から頒布されるもの、蔵元が独自に培養・頒布する清酒酵母もある。
※代表的な酵母の特徴については、別項で順次解説。