年の瀬など、まだまだ先の話と思っていたのに、ふと気がつけば師走月。毎年のことながら、12月の声を聞いたとたん、年内にすませなければいけない仕事や用事がどっと我が身に押し寄せる心地がして、気ぜわしさばかりがつのってきます。
そんな“懸案事項”の中でも、とりわけ呑気で心楽しい悩み事が「正月三が日は、どんなお酒を飲もうかな」というもの。正月につきもののお屠蘇といえば、本来は屠蘇散入りの薬膳酒が正式なところですが、こちらの儀式はちゃっかり飛ばし、念入りに選んでおいたおいしい酒をもって屠蘇となすのが、わが家のならい。封を開けてしまいたい誘惑をぐっとこらえ、ここぞの一献のために取っておいたあの虎の子、この箱入り娘の顔を思い浮かべては千思万考。うっかりすると、仕事そっちのけでリストに書き出し始めるほどの熱中ぶりで、はや年始の到来が待ち遠しくなる始末です。
そんなマツザキ的“屠蘇セレクション”の条件は、まず大吟醸であること。純米かアル添かの別を問わず、ここは外せません。というのも、年始の祝い膳には、“あらたまの酒”にふさわしい晴れがましさや華やぎが必要だと思うから。大吟醸酒は、蔵元にとっていわば「掌中の珠」に相当する酒です。単に精米歩合が云々といった技術レベルでの話以上に、出自そのものに“ハレ”の高揚感や存在感をまとった酒と言ってもいいでしょう。普段は、より人懐こい旨味の吟醸のほうが好みという人、もしくは本醸造クラス、いやいや普通酒でも十分だよ、というコストパフォーマンス重視派も、この日ばかりは四の五の言わずに大吟醸をフンパツする。そんな“気合”もまた、日本酒を味わう楽しみをぐんと高めてくれる大切な要素だと思うのです。
普段着での晩酌では、時に香りが立ちすぎて敬遠しがちな金賞受賞酒も、お正月となると飲んでみたくなる酒のひとつです。鑑評会やイベント会場などで「おっ、これはなかなか…」と感じ入り、買い入れておいた1本が、満を持しての登場となることも。たくさんの酒をきいていると、何年かに1度くらいの割合で、「これは天から降りてきたのではなかろうか」と思える1本と出会うことがあるもの。そんなとっておき数種類を卓上に並べ、料理をつまんでは飲み比べる楽しみも、三が日限定の贅沢といえましょう。
それでは、まだ少し早いですが、皆さんもどうぞよいお年を!





