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”マツザキ的”日本酒つれづれ用語帳 日本酒大辞典

【第3回】監修:松崎晴雄 文:堀越典子 「あけおめ」はハレの酒、大吟醸で ※本文中の赤字の用語にロールオーバーすると解説が表示されます。

年の瀬など、まだまだ先の話と思っていたのに、ふと気がつけば師走月。毎年のことながら、12月の声を聞いたとたん、年内にすませなければいけない仕事や用事がどっと我が身に押し寄せる心地がして、気ぜわしさばかりがつのってきます。
そんな“懸案事項”の中でも、とりわけ呑気で心楽しい悩み事が「正月三が日は、どんなお酒を飲もうかな」というもの。正月につきもののお屠蘇といえば、本来は屠蘇散入りの薬膳酒が正式なところですが、こちらの儀式はちゃっかり飛ばし、念入りに選んでおいたおいしい酒をもって屠蘇となすのが、わが家のならい。封を開けてしまいたい誘惑をぐっとこらえ、ここぞの一献のために取っておいたあの虎の子、この箱入り娘の顔を思い浮かべては千思万考。うっかりすると、仕事そっちのけでリストに書き出し始めるほどの熱中ぶりで、はや年始の到来が待ち遠しくなる始末です。
そんなマツザキ的“屠蘇セレクション”の条件は、まず大吟醸であること。純米アル添かの別を問わず、ここは外せません。というのも、年始の祝い膳には、“あらたまの酒”にふさわしい晴れがましさや華やぎが必要だと思うから。大吟醸酒は、蔵元にとっていわば「掌中の珠」に相当する酒です。単に精米歩合が云々といった技術レベルでの話以上に、出自そのものに“ハレ”の高揚感や存在感をまとった酒と言ってもいいでしょう。普段は、より人懐こい旨味の吟醸のほうが好みという人、もしくは本醸造クラス、いやいや普通酒でも十分だよ、というコストパフォーマンス重視派も、この日ばかりは四の五の言わずに大吟醸をフンパツする。そんな“気合”もまた、日本酒を味わう楽しみをぐんと高めてくれる大切な要素だと思うのです。

普段着での晩酌では、時に香りが立ちすぎて敬遠しがちな金賞受賞酒も、お正月となると飲んでみたくなる酒のひとつです。鑑評会やイベント会場などで「おっ、これはなかなか…」と感じ入り、買い入れておいた1本が、満を持しての登場となることも。たくさんの酒をきいていると、何年かに1度くらいの割合で、「これは天から降りてきたのではなかろうか」と思える1本と出会うことがあるもの。そんなとっておき数種類を卓上に並べ、料理をつまんでは飲み比べる楽しみも、三が日限定の贅沢といえましょう。
 それでは、まだ少し早いですが、皆さんもどうぞよいお年を!


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屠蘇

1年の無病息災を祈願し、年頭に飲む薬酒。漢方の生薬数種類を配合した屠蘇散を日本酒に浸し、砂糖や味醂を加えて甘くしたものを朱塗りの三つ重ねの杯につぎ、年少者から年長者へと杯を回して飲むのが正式の作法。もともとは中国から伝わった習慣で、「蘇(病をもたらす悪霊)」を「屠(ほふ)る」との意味がこめられている。屠蘇散に含まれる生薬の種類には、肉桂、山椒、防風、大黄、小豆、桔梗などが含まれ、胃腸の働きを整えたり、利尿を促すなどの薬効がある。三が日の飲みすぎ、食べすぎが気になる人は、予防薬として飲むのも一興。

大吟醸

精米歩合50%以下(一粒一粒の米が半分以下の大きさになるまで磨いた状態)の白米・米麹・水、またはこれらに醸造アルコールを加えたものを原料として、低温でゆっくり発酵させる「吟醸づくり」で丁寧に醸された酒。蔵元の技と名誉をかけて造られる、日本酒の芸術品ともいえる。精米歩合30%~40%台のものが主流だが、最近は20%台、10%台まで米を磨きに磨いた大吟醸も登場。総じてフルーツや花の香りを思わせる香気があり、雑味のない洗練された味わいをもつ。白米の重量の10%以下の醸造アルコールを添加したものを「大吟醸」、アルコール添加のないものを「純米大吟醸」と呼び分けている。

純米

文字通り、米、米麹、水のみを原料とし、醸造用アルコールなどの添加を一切行わずに造られる酒。2003年以前は「精米歩合70%」と規定されていたが、2004年以降の酒税法改訂により、原材料の要件を満たしていれば「純米酒」を名乗れるようになった。ただし、精米歩合を表示すること、麹の最低使用率を15%以上にすること、三等以上の原料米を使用することが条件づけられている。
味わいの面では、吟醸酒や本醸造に比べ、より米本来のコクや太い酒質をもつものが多い。酒造会社の個性や持ち味が、最も濃く反映されやすい酒でもある。精米歩合60%以下、あるいは特別な醸造方法で造られた純米酒は「特別純米」を表示できる。

アル添

醸造アルコールの添加、または添加されている酒の略称。添加される醸造アルコールは、主にさとうきびなどの穀物を発酵させ、連続式蒸留機で蒸留した高純度のエチルアルコール。技術のルーツは、江戸時代に腐敗防止策として取り入れられていた「柱焼酎」(焼酎をもろみの末期に加える)にあるとされる。
大きく分けて、増量を目的したアル添と香りや酒質の調整を目的としたアル添との2通りがあるが、本醸造や吟醸、大吟醸クラスを含む「特定名称酒」のカテゴリーでは後者が基本。添加アルコールの割合も、白米重量の10%以下と決められている。もろみの発酵末期にアルコールを加えることで、発酵が止まり、すっきりとした風味やキレのよさが備わる。保存性を高める上でも有効な技術とされる一方で、「味わいが単調で無個性になりやすい」「淡麗になりすぎる」などの理由で敬遠する人も少なくない。

精米歩合

白米の原料である玄米に対し、精米後の白米が占める重量の割合。米の胚芽や表層部には、たんぱく質やビタミン、脂肪、灰分などが多く含まれ、これが酒に仕込んだときの雑味となりやすいため、精米で取り除く必要がある。当然ながら、パーセンテージの数値が小さくなるほど、酒の原価が上がって高級仕様に。精米歩合30%の大吟醸ともなれば、実に米の7割を削ってしまうわけで、いかに贅沢な造りであるかが知れようというもの。

吟醸

精米歩合60%以下の米と米麹、水、またはこれらに醸造アルコールを加えたものを原料として、低温発酵の「吟醸づくり」で醸される酒。もともとは、「吟味して醸造した酒」の意味から、明治~大正時代に生まれたネーミングとされる。
醸造アルコール添加のものを「吟醸」、添加なしのタイプは「純米吟醸」と呼び分けるところは、大吟醸と共通。吟醸づくりならではのフルーティーな香気を特徴としながらも、大吟醸より低精白の米で仕込むぶん、コクや旨味の幅が感じられるタイプが多くなっており、年季の入った日本酒党の間では「大吟醸よりも吟醸クラスが好み」という声もよく聞かれる。

本醸造

精米歩合70%以下の米、米麹、水に、一定量(白米重量の10%以下に添加アルコールの度数を95%で換算した場合)の醸造アルコールを添加して造られる酒。一般的に純米酒よりもさらりとして、クセのない味わいのものが多い。精米歩合60%以下、または特別な醸造方法で造られた本醸造は「特別本醸造」を表示できる。

普通酒

吟醸酒(大吟醸酒を含む)、純米酒(特別純米酒を含む)、本醸造酒(特別本醸造酒を含む)から成る「特定名称酒」の基準を満たしていない清酒全般の呼称。昔で言うところの二級酒に相当し、「一般清酒」などと呼ばれることもある。
精米歩合やアルコール添加の割合に基準は設けられておらず、アル添の割合を抑えて限りなく本醸造に近い造りをしているものから、増量のための多量のアルコール添加、あるいは糖類や酸味料を加えたものまで、品質はまさに玉石混交。蔵元の良心が最も反映されやすいクラスの酒ともいえる。添加する醸造アルコールの量は、白米1トン当たり280Lまで(添加アルコールの度数を95%で換算した場合)と規定されている。

金賞受賞酒

独立行政法人「酒類総合研究所」(旧:国税庁醸造研究所)が主催する「全国新酒鑑評会」をはじめ、各地で開催される各種鑑評会で上位入賞を果たした酒。出品酒は蔵元が威信をもって送り出す最高級クラスの大吟醸が中心。鑑評会用として専用に仕込まれ、市場には出回らないケースも多いため、人気銘柄はマニア垂涎の的となる。
相対的には、高精白で香りの高い酒が審査に残る傾向が強く、受賞向きの酒質として「YK35(Y=山田錦、K=協会9号酵母、35=精米歩合35%)」などの言葉が使われることもある。