「秋たけなわの10月から11月にかけては、春と並んで日本酒関係の行事が多い季節。各種きき酒会や鑑評会、地方で開催される大小の酒の会が相次ぎ、全国津々浦々を行ったり来たりの日々が続きます。会場に並ぶ酒はといえば、ひと夏を越して旨味ののった「ひやおろし」や、個性的な味わいの秘蔵古酒など、熟成酒の顔ぶれが充実してくるのが、この季節ならではの特徴。春に一度新酒で飲んでいる銘柄のこなれ具合を、再び舌で確かめる楽しみもあります。
こうして、あちこちに足を運びつつ、きき酒をする銘柄の数は、年間にならしてざっと10000種類ほど。風邪で体調がよくなかろうが、二日酔いであろうが、雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ、きき酒の機会ありと聞けばホイホイ出かけてしまうのは、身についた性分のようなものといえるかもしれません。
飲み比べの楽しみにはまったのは、思い起こせば学生時代。クラブの合宿で地方に行くたび、まず地元の酒屋さんを探し当てて、とりどりの地酒を買い集めるのが常でした。とはいえ、一人で飲みきれるものでもなく、友人たちを巻き込みながらあれを飲み、これを飲み・・・。
生酒と火入れの味の違い、濁り酒の朴訥として人懐い風味、杉の香りがほどよくのった樽酒の味わい深さ。そんな酒の個性を総当り的に知ることで、日本酒への興味がますます、つのっていったように思います。
当時、日本酒造組合が銀座で運営していた「日本酒センター」へも、せっせと足を運んだものでした。目当ては、日替わりで5種の酒で行われていた「きき酒コーナー」。高得点を目に留められ、「きき酒選手権に出ませんか」と言われたこともあります。ここでは低アル酒や貴醸酒など、それまで知らなかった新しい酒の存在を知り、大いに目が開かれたものでした。
新しく開発されたこのような酒については、年季の入った日本酒党の人ほど、ハナから「邪道」と決めつける傾向が強いようですが、個人的には残念なことだと感じています。ことテイスティングにかぎって言えば、モノを言うのは知識よりも、場数を多く踏むためのフットワークと好奇心。「百聞は一飲にしかず」の柔軟性をもって、いろいろな酒との出会いを楽しんでほしいと思います。




