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”マツザキ的”日本酒つれづれ用語帳 日本酒大辞典

【第14回】監修:松崎晴雄 文:堀越典子「利き酒は遊びだ!(利き酒レッスン(1))」 ※本文中の赤字の用語にロールオーバーすると解説が表示されます。

 さて、今回から3回にわたって、いよいよ利き酒の実践とまいりましょう。とあるセミナーで、もとい、もっと気楽に家飲みで、これから利き酒をしようとしている図を想定しながら、しばしお付き合いください。
 まず、基本的な質問をひとつ。そもそも利き酒の目的とは、何だと思いますか?「色や香りや味から、酒質の良し悪しを判定すること」と答えたそこのあなた、正解です。ただし、“プロの利き酒の 場合は”というエクスキューズ付きですが。日本酒の利き酒というと、「減点法で面白みがない」などという声を聞くことがありますが、それもプロが行う鑑評レベルでの話に限られたこと。プロの利き酒は、言ってみれば医者の健康診断のようなものですから、悪いところがないかチェックするのが大前提なのです。
 でも、晩酌でおいしい日本酒を味わいたい、あるいは日本酒の魅力をもっと知りたいと願うノンプロの人にとって、利き酒の最終目的は“楽しむ”ことにほかならないはず。となれば、必要以上に粗を探すなど、まったく意味のないことです。難しい専門用語を覚える必要も、一切ありません。いい日本酒が置いてある店などに行くと、しかつめらしい顔で酒を口にしながら、「これは、さばけが悪いな」「がらがよくない」「おし味が足りないね」なんてことを言う人を見かけることがありますが、あれですね、寿司屋で客が「ギョクをください」と注文するのと同じくらい無粋な感じがします。「ごく味に欠ける」「味だれがしてるな」などというスレた台詞も、プロに任せておきましょう。

 利き酒に欠かせないのは「記憶力」と「表現力」です。とはいえ、呑んべえの記憶力ほどあてにならないものはありませんから、最低限でも上立ち香含み香の印象をメモする習慣をつけておくといいですね。私自身、財布は忘れても利き酒用のメモは肌身離さずに持ち歩き、酒を口にする機会があれば、欠かさずにメモをとるようにしています。さらに願わくば、最低でも2種類以上の酒を用意して、比較対照できる状況をつくっておきたい。利き酒の極意は、何といっても“飲み比べ”にあるからです。後は、「これは純米酒だから」「このメーカーの酒はこうだから」といった先入観を捨てて、自由に、ポジティブに、イメージの世界に遊ぶべし!
次回は、その精度を高めるヒントについて、具体的に解説していきたいと思います。


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さばけ

日本酒の酒質を表す用語のひとつで、粘りつく感じがなく、さらりとキレのある状態を「さばけが良い」といった言い方で表現する。利き酒では、主に酒を飲み込んだ後ののどごし、後口のよさを評価するときに多用するが、酒母や麹の粘り具合を判断する場合にも、「さばけが良い、悪い」という表現用語を使う。

がら

日本酒において、雑味の有無を表現する専門用語。「がらの良い酒」といえば、どちらかというと淡麗で、口当たりがやわらかく、きめの細かいきれいな酒のイメージ。反対に、五味のバランスが悪く、のどごしのきれが鈍重でだれた印象を与える酒を指して、「がらの悪い酒」などと形容する。

おし味

日本酒に備わるコクや旨味のこと。一般的にアミノ酸に由来する豊かな味わいが感じられ、しっかりとしたアルコールの感触がある力強い酒質を指す。俗に“男酒”と呼ばれる灘の日本酒や生酛、山廃系の純米酒は、“おし味のある酒”の典型的なタイプ。

ごく味

酒質を評価する重要な要素のひとつで、複雑な旨味があり、かつ五味のバランスがとれている状態を指す慣用的表現。成分構成の実際よりも、口当たりや飲み込む際ののどごしの心地よさも含め、総合的かつ主観的な味覚作用を表現するために使うことが多い。「コク」と同義語であり、同じ文脈で「にく」「濃醇味」「はば」「ふくらみ」などの言葉が使われることもある。

味だれ

“だれ”とは、甘みが酸を凌駕していて、酒の味にしまりがなく、きれやメリハリに欠けること。一飲したところ濃醇な酒であっても、熟成が進みすぎると“味だれ”が起こり、ぼやけた印象になってしまうことがある。

上立ち香

日本酒を器に注いだ際、口に入れる前に酒から立ち上ってくる香り。「立ち香」「はな」ともいう。主にりんご、メロン、ぶどう、バナナなどの果実やフローラル系の華やかな吟醸香のほか、樽香やセメダイン系の匂い、老ね香などのように、原料米や酵母、製法、保存方法に由来する特徴的な香りが備わることもある。利き酒の際には、こうした香りの種類だけでなく、その強弱や広がり、持続性と変化、含み香とのバランスを判断することが重要となる。

含み香

日本酒を口に含んだときに感じる香り。「口中香」「引き込み」ともいう。利き酒では、酒を口に含み、すすりながら口の中に広げていき、鼻腔に達するまでの間に感じる香りを判定する。上立ち香と同様にさまざまな種類があるが、上立ち香ではわかりにくい熟成香や酸臭などを感じやすく、官能判定において大きなポイントになる。