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”マツザキ的”日本酒つれづれ用語帳 日本酒大辞典

【第12回】監修:松崎晴雄 文:堀越典子「ワイキキでキキ酒」 ※本文中の赤字の用語にロールオーバーすると解説が表示されます。

 2009年夏のバカンスは、常夏の楽園、ハワイで。なんてことを言うと、「えっ、マツザキさんがハワイ!? 似合わな~い!!」のツッコミが即行で返ってきそうですが、ほんとなんです、ええ。
と言っても、リゾート目当てに行ったわけではなく、目的はほかならぬ“SAKE”。1年に1度、ホノルルで開かれる「JOY OF SAKE」という利き酒イベントに参加するのが大目的で、自慢にもなりゃしませんが、ビーチにもゴルフにも一切縁のないハワイ滞在でありました。
 “全米日本酒歓評会”とも呼ばれる「JOY OF SAKE」は、ニューヨークとハワイの2ヶ所で開催されており、ハワイでの開催は今年で9回目。地元では有名な一大イベントで、なんと1400名もの参加者が詰めかけます。今年度は美しい中庭と回廊をもつホノルル美術館が舞台とあって、雰囲気も満点。会場には、パーティーに先立って日米の日本酒専門家の厳正な審査によって選ばれた受賞酒も含め、淡麗で繊細な大吟醸から濃醇・骨太な純米酒まで、産地も味わいもさまざまな約280種類のお酒がズラリと並びます。
 それぞれの酒にはスポイト付きの利き猪口が備えられ、一見鑑評会さながらの粛々としたムード。しかし、そこはタフで陽気なハワイアン・ピーポー、地元レストランの出店によるパシフィックリム料理や生バンドの演奏を楽しみながら、ノリノリでSAKEを満喫している様子。もちろん、ハキなどという野暮なものは、一切見当たりません。

 この「JOY OF SAKE」に初めて参加したのは、第1回目が開かれた2001年、審査員として招かれたのがきっかけでした。奇しくも「9.11」の同時多発テロがあった年で、事件現場のワールドトレードセンターで予定されていたニューヨークのイベントは中止に。ホノルル空港もいつになく緊迫した雰囲気だったのを覚えています。当時はパーティーも400人程度と今より小規模でしたが、予想をはるかに超えるSAKEファンの熱気、かくも離れた外地で日本酒を盛り上げようという心意気に触れて、胸が熱くなったものでした。
 それから10年近くが過ぎた今では、ハワイでおなじみのABCストアにももれなく日本酒が並び、大型スーパー「ドン・キ○ーテ」の品揃えにいたっては、「ここはどこ?」と頬をつねりたくなるほどの充実ぶり。街中のリカーショップを覗いてみると、「SAKE 2 ME」なる摩訶不思議な日本酒カクテルまで売られていて、飲み手の広がりをまざまざと実感させられるのです。
 ちなみに、海外創業の清酒メーカーとして酒造史に残る酒蔵が誕生したのも、ここハワイの地。その名もホノルル酒造(1986年に米国酒造メーカーが買収)では、日本に先立って冷房設備を導入したり、泡なし酵母で酒を仕込むなど、醸造技術でも高いレベルを維持していたと伝えられています。
 というわけで、似合わなくたってなんのその、私のハワイ通いは、これからも続いていくことになりそうです。


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利き酒

酒を色、香り、味の観点から官能によって鑑定し、酒質の良否を評価する方法。従来は、主に全国各地で行われる新酒鑑評会などで格付け審査を行うための手法といった意味合いが強かったが、近年は食品見本市や酒販店や料飲店主催による試飲会を中心に、一般愛好者を含む幅広い層が酒を味見する機会が増え、これらを総称して“利き酒”と呼ぶ習慣が定着している。官能検査としての本来の手順は、まず利き猪口に注いだ酒の色と透明度を見てから、香りをかぎ、口に含んで味わうというもの。口に入れるときは、最初に少量を含んで舌の上をころがして香味を判断し、さらに口先をすぼめて空気を吸い込む方法で鼻から抜ける香りを利いた後、吐き出して口の中に残る後味を検分する。通常の利き酒は、酒質を公正に判断するために15℃前後の常温で行うのが基本。ただし、特定の目的に応じて加温した状態で利き酒が行われることもあり、これを「燗酒唎(かんしゅぎき)」「熱酒唎(ねっしゅぎき)」などと呼ぶ。

淡麗

清酒の好ましい風味や口あたりを表現する用語のひとつ。一般的には酸度が少なく、口あたりやのどごしがなめらかな酒に相当する言葉で、しばしば「濃醇」と相対的な文脈で使われる。「きれい」「きめが細かい」などと表現されることも。総じて雑味の少ない清澄な味わいを指し、吟醸造りの清酒全般や、すっきりした飲み口のものが多い新潟酒が淡麗型の代表的存在に挙げられる。

濃醇

清酒の味わいを表現する用語のひとつ。一般的には酸度が高く、口にしたときに、深みのある旨味やコクを感じさせる酒に使われる。高精白よりは低精白、硬水仕込で高温・長期のもろみ発酵といった条件下で備わりやすい風味で、山廃や生酛の純米酒、軟水仕込ではあるが旨口型の広島酒などは、典型的なキャラクターといえる。

利き猪口

利き酒に用いられる専用の猪口。寸胴型の白地の磁器製で、酒の色と透明度を判定しやすいよう、底に藍色の二重丸が描かれていることから、「蛇の目」とも呼ばれる。正式な利き猪口は、直径約8cm、深さ約7cm、容量約200mlのサイズ。これは、鼻が容器の内側にすっぽりと埋まる幅、酒の濁りが判別できる奥行から考えられたといわれる。色味や透明度の印象が香味の判断に影響しないよう、あえて容器の内側を黄色に塗った利き猪口が使われる場合もある。

鑑評

酒の品質の良否を鑑定・評価すること。「鑑評」という言葉は、もともと酒造業界のみで使われているものであり、辞書などには載っていない造語的表現。明治44年のスタート以来、ほぼ1世紀にわたって行われている「全国新酒鑑評会」のタイトルから、この呼び方が定着していった。“鑑”の一文字が与える厳格なイメージを避け、ハワイのイベントにならって酒を楽しむニュアンスを強調するために、「“歓”評会」のタイトルを掲げている山形県の例もある。

ハキ

利き酒の際、口の中に残った酒を吐き出すための器。「はき壷」ともいう。利き酒会場などでは、床置き式の専用器や大型のバケツなどが一般的。小規模な利き酒の場では、陶製や金属製のハンディタイプのハキが使われることも多い。

泡なし酵母

酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスに分解される“もろみ発酵”の過程で、泡を発生しない清酒酵母のこと。泡粒が生まれないのは、酵母細胞の表面の膜がないことから水になじみやすく、泡を抱き込んで形成する力が弱いため。ただし、発酵後の酒質やアルコールの生産性では泡つき酵母にひけをとらない。また、泡つき酵母では、発酵中の高泡が発酵槽からあふれ出ないよう、もろみの収容量を少なめに設定する必要があるが、泡なし酵母の場合はタンクいっぱいにもろみを仕込むことが可能なうえ、洗浄が大変な上縁の泡汚れを避けられるメリットがある。本来は偶発的に生まれる突然変異種の酵母だが、「きょうかい酵母」の泡なし変異種を分離する研究開発により、広く頒布されるように。現在、「きょうかい酵母」の末尾に01の番号が付される泡なし酵母は、全体の7割を占めるほどに普及が進んでいる。