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”マツザキ的”日本酒つれづれ用語帳 日本酒大辞典

【第1回】監修:松崎晴雄 文:堀越典子 それは、酒蓋のコレクションから始まった ※本文中の赤字の用語にロールオーバーすると解説が表示されます。

日本酒が好きになったきっかけは何ですか?」
 日本酒を専門とする仕事についているせいか、こんな質問を受けることがよくあります。

 つらつら思い起こすに、日本酒にはまリ出したのは、小学校2、3年生の8歳の頃。いえいえ、その頃から飲んでいたわけじゃありません。夢中になっていたのは、中身ではなくて蓋のほうでして。当時は、酒蓋や牛乳キャップを意味もなく集めるのが、子供たちの間で大層流行っていたのです。昭和30年代生まれの方なら、覚えがあるのではないでしょうか。

なかなかいけるクチだった父親ですが、なぜか家で日本酒を飲むことはなく、それがかえって収集欲をかき立てることになったのでありました。マイ・コレクションの拡充を図るべく、ある時には、酒屋の店先に積まれた空瓶から蓋を無断でゲットしたことも再々。戦利品を持ち帰ったはいいものの、よくよく見ると味醂の蓋だった、なんていう失敗もありました。

日本酒の種類が今ほど多くなく、呼び分け方とすればせいぜいが「清酒 一級・二級」、あるいは冷やかの別しかなかった時代の話です。

色もデザインもさまざまな酒蓋を眺めていると、子供心に「どんな味なんだろう」と好奇心をかきたてられました。満を持して、その味を確かめたのは、大学に入学してから後のこと。当時、学生のコンパといえば、ウイスキーの水割りが主流。そんななかで、あえて日本酒を好んで口にする、かなりシブめの(変わり者ともいう?)大学生でした。折から始まったブームにあおられ、個性豊かな地酒の魅力にどっぷりはまってしまったのも、この頃です。

え? コレクションした酒蓋はどうしたかって?学生時代から集めたものは、今でも大切に所蔵してありますとも。この前見たらサビまくってました。トホホ...(泣)。 「雀百まで何とやら」のたとえどおり、今でも酒蓋を見ると、ついイソイソと箱にしまい込んでしまう自分がいるのです。

 毎回、日本酒にまつわるエピソードとからめて、関連用語について説明していこうというこのコーナー、第一回目はいかがでしたか。時には居酒屋や酒屋さんなど、お酒を飲んだり、買ったりするためのシーンもからませながら、実践的な用語解説も試みていきたいと思っています。どうぞ楽しみにお付き合いください!


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日本酒

酒税法上では、「米・米麹(こうじ=蒸した米に麹菌をふりかけ、発酵に有効なカビなどの微生物を繁殖させたもの)・水を主原料として発酵させ、こしてつくる酒」のこと。 私見的定義ではズバリ、「世界で最高の(米の)酒」。税法上では「清酒」と同列に扱われているものの、「日本酒」の呼び方のほうが比較的新しく、洋酒に対する“和の酒”の意味合いとして戦後急速に浸透していったものと思われる。
同じ“和酒”でも焼酎と一線を画するのは、ビール、ワインと並んで「醸造酒」に分類される点。他の酒類に比べ異なるのは、「糖化」と「発酵」を並行して行う醸造方法(並行複発酵)を特徴とするところ。米麹を使った酒づくりが書物に登場するのは、713年発行の『播磨国風土記』が最初。

味醂

米を用いた日本のリキュールの代表選手。今では料理用に使う酒として定着しているが、江戸時代中期までは甘いリキュールとして、もっぱら飲用に消費されていた。実際、伝統的な製法で丁寧に造られた長期熟成の本みりんは、とろりと濃密かつ品のよい甘みがあり、食後酒として貴腐ワインの「ソーテルヌ」にもひけをとらない旨さ。
蒸したもち米、米麹に焼酎を合わせて仕込み、搾ってから20度前後の温度で貯蔵熟成させるのが「本みりん」。酒税法では「酒類」に分類され、アルコール度数も14度前後と高い。中国で造られていた「密淋(ミイリン)」という甘い酒にちなむとする「中国渡来説」と、日本古来の甘いお酒に腐敗防止のために焼酎を加えたのがはじまりとする「日本発生説」と、2つの起源説がある。

清酒

酒税法上では、「日本酒」と同義(下表参照)。清酒造りの原型と目されるのは、室町時代末期から普及した「諸白(もろはく)」という仕込み法。原料米をそれまでの玄米から白米に変え、麹にする米(麹米)と、もろみに直接仕込む米(掛米)の両方に精白米を用いたもので、当時の高級酒とされていた。
江戸時代には、さらに洗練された味わいに仕立てるため、諸白のもろみを搾った「澄み酒」が登場。これが、今日の清酒に等しいものといわれている。

酒税法第3条第7号 清酒 次に掲げる酒類でアルコール分が22度未満のものをいう。| イ)米、米こうじ、水を原料として発酵させて、こしたもの ロ)米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(米こうじを含む。)の重量の100分の50を超えないものに限る。) ハ)清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

1940年から92年まで約半世紀の長きにわたり、日本酒の分類体系として級別制度が存在していた時代の商品区分。等級は「特級」「一級」「二級」(「特級」は89年に廃止)三段階に分類され、それぞれの級ごとに酒税の割合が定められていた。
特級、一級は酒税が高いぶん、当然ながら値段も高く、当時は「進物やハレの席では一級以上」が共通認識。ただし、等級は主にアルコール度数や製造量などによって決められるもので、原材料や製造方法などの品質とは直接かかわりをもたないため、あえて無名の小さな蔵の上質な二級酒の中から、“お宝”を探し当てることに楽しみを見出すマニアも少なくなかった。不肖マツザキも、極上の二級酒探しにはまったクチ。

冷や

日本酒の温度帯のひとつ。一見、キーンと冷たい冷酒をイメージしがちだが、本来「冷や」といえば、20℃前後の常温を指す。昔の土間の温度を想定されているらしい。
味わいとしては、香りや風味がありのままに出やすく、口当たりは丸く、ソフトな印象に。鑑評会などでのきき酒も、「冷や」で行うのが基本。

燗

ご存じ、温め酒のこと。燗酒が記録として初めて歴史に登場するのは、平安時代の昔。“燗”の文字は、冷たさと熱さのちょうど“中間”を表すものとされる。
本来は重陽の節句(9月9日)から桃の節句(3月3日)までの楽しみ方とされていたが、昨今では「夏でも燗」を標榜する燗酒党も急増中。温めることでアミノ酸の分解が促されるため、よりふくよかな旨味が備わること、飲むペースがゆるやかになることから、悪酔い防止に効果的なことなど、味わいや健康上のメリットも数知れず。温度や味わい方の詳細については、追い追い別の機会に・・・。

地酒

本来は読んで字のごとく、その土地で産出される、その土地特有の酒、の意。京都の伏見、神戸の灘、広島の西条が三大酒どころとされていた江戸~明治時代にかけて、「地酒=名醸地以外のエリアで造られた格下の酒」といった意味合いがあった。
しかし、昭和50年代に起こった第一次地酒ブームを境に事情は一変。主に大手ナショナルブランドに対するローカルブランド的な意味合いが強まり、「良心的な手造りの酒」「個性的な味わいの酒」「希少価値の高い幻の酒」の代名詞的な存在に。今でも「地酒=小仕込みで丁寧に造られる佳酒」「大手メーカーの清酒=大量生産の酒」といったイメージがもたれがちだが、昨今は規模の大小にかかわらず技術が向上し、全体の酒質もレベルアップしている。
妄信や飲まず嫌いで安易な決めつけに走るより、さまざまな酒を手にとり、実際に舌で味わってみることをすすめたい。