
早生神力と備前雄町をルーツにもつ「愛船117」を父に、山田錦と雄町の交配種「山雄67」を母にもつ酒造好適米品種。両方から1字ずつ取って「愛山」と命名された。
昭和16年、県立明石農業改良実験所で開発がスタートし、品種登録されたのは戦後の昭和24年。玄米の粒の大きさや、心白を有する米の割合では山田錦をしのぐといわれるが、兵庫県吉川町の大手酒造メーカーとその契約農家の間で半ば独占的に栽培され、門外不出の米と目される時代が長く続いていた。しかし、阪神大震災を契機に、独占状態が緩和されることに。さらに平成15年には、高木酒造、久慈酒造、磯自慢酒造など11の蔵元の若い後継者が集まって「酒道の会」を結成し、愛山を用いた高精白の吟醸酒造りに着手。「十四代・播州愛山」をはじめとする佳酒が次々と誕生するのと並行して、愛山を使用しての酒造りにチャレンジする蔵が増えていった。
もともと栽培が難しく収量の少ない“農家泣かせ”の米として知られているが、今でも限られた生産量の希少品種であることに変わりはなく、山田錦以上の高値で取引されることもある。
“だれ”とは、甘みが酸を凌駕していて、酒の味にしまりがなく、きれやメリハリに欠けること。一飲したところ濃醇な酒であっても、熟成が進みすぎると“味だれ”が起こり、ぼやけた印象になってしまうことがある。

清酒中のアミノ酸含有量を、所定の測定法によって計測した数値。アミノ酸の主体は、グルタミン酸、アラニン、グリシン、バリン、アルギニンなど。料理酒に含まれるアミノ酸は、一般清酒の約4倍に相当する量。飲用としては、アミノ酸度1.0前後~1.8程度の数値を示す酒が多い。数値が低いほどすっきりと飲みやすく、高くなるほどコクや雑味を感じやすくなる傾向がある。

もろみを搾り、清酒と酒粕に分離する「上槽(じょうそう)」の過程で、最初に流れ出てくる原酒の呼び名。圧搾・上槽を行うとき、酒袋にもろみを詰めて槽(ふね:もろみを搾る木製の器械)の中に積み重ね、酒袋の重みで酒が自然に垂れるのに任せるのが伝統的な方法だが、最初に垂れてくるぶんは白濁を帯び、炭酸ガスが残っている。その粗削りながらフレッシュでハツラツとした風味と口当たりは、いかにも「荒走り」の呼び名にふさわしい。最近は、搾ったばかりで出荷される新酒全般の総称として「あらばしり(新走り)」の呼び名が使われることも多い。

清酒中のアルコールを“酒精計”と呼ばれる専用の器具で計測した数値。「アルコール分」と同義。液温15℃の清酒に含まれるエチルアルコールの濃度を%(パーセント)で表示したものだが、ラベルには「~度」の単位で表示されることが多い。日本酒をはじめとする醸造酒には、水とエチルアルコール以外の成分も含まれるため、一度蒸留して水とエチルアルコールのみにしてから計測する。一般に市販されている清酒では15.0~15.9%のものが多いが、昨今は16~17%台の原酒のラインナップも充実してきた。
![アル添[酒]|アルてん[しゅ]](./img/a_aruten_tle.gif)
醸造アルコールの添加、または添加されている酒の略称。添加される醸造アルコールは、主にさとうきびなどの穀物を発酵させ、連続式蒸留機で蒸留した高純度のエチルアルコール。技術のルーツは、江戸時代に腐敗防止策として取り入れられていた「柱焼酎」(焼酎をもろみの末期に加える)にあるとされる。
大きく分けて、増量を目的したアル添と香りや酒質の調整を目的としたアル添との2通りがあるが、本醸造や吟醸、大吟醸クラスを含む「特定名称酒」のカテゴリーでは後者が基本。添加アルコールの割合も、白米重量の10%以下と決められている。もろみの発酵末期にアルコールを加えることで、発酵が止まり、すっきりとした風味やキレのよさが備わる。保存性を高める上でも有効な技術とされる一方で、「味わいが単調で無個性になりやすい」「淡麗になりすぎる」などの理由で敬遠する人も少なくない。
酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスに分解される“もろみ発酵”の過程で、泡を発生しない清酒酵母のこと。泡粒が生まれないのは、酵母細胞の表面の膜がないことから水になじみやすく、泡を抱き込んで形成する力が弱いため。ただし、発酵後の酒質やアルコールの生産性では泡つき酵母にひけをとらない。また、泡つき酵母では、発酵中の高泡が発酵槽からあふれ出ないよう、もろみの収容量を少なめに設定する必要があるが、泡なし酵母の場合はタンクいっぱいにもろみを仕込むことが可能なうえ、洗浄が大変な上縁の泡汚れを避けられるメリットがある。本来は偶発的に生まれる突然変異種の酵母だが、「きょうかい酵母」の泡なし変異種を分離する研究開発により、広く頒布されるように。現在、「きょうかい酵母」の末尾に01の番号が付される泡なし酵母は、全体の7割を占めるほどに普及が進んでいる。

1940年から92年まで約半世紀の長きにわたり、日本酒の分類体系として級別制度が存在していた時代の商品区分。等級は「特級」「一級」「二級」(「特級」は89年に廃止)三段階に分類され、それぞれの級ごとに酒税の割合が定められていた。
特級、一級は酒税が高いぶん、当然ながら値段も高く、当時は「進物やハレの席では一級以上」が共通認識。ただし、等級は主にアルコール度数や製造量などによって決められるもので、原材料や製造方法などの品質とは直接かかわりをもたないため、あえて無名の小さな蔵の上質な二級酒の中から、“お宝”を探し当てることに楽しみを見出すマニアも少なくなかった。不肖マツザキも、極上の二級酒探しにはまったクチ。
日本酒を器に注いだ際、口に入れる前に酒から立ち上ってくる香り。「立ち香」「はな」ともいう。主にりんご、メロン、ぶどう、バナナなどの果実やフローラル系の華やかな吟醸香のほか、樽香やセメダイン系の匂い、老ね香などのように、原料米や酵母、製法、保存方法に由来する特徴的な香りが備わることもある。利き酒の際には、こうした香りの種類だけでなく、その強弱や広がり、持続性と変化、含み香とのバランスを判断することが重要となる。

日本酒に備わるコクや旨味のこと。一般的にアミノ酸に由来する豊かな味わいが感じられ、しっかりとしたアルコールの感触がある力強い酒質を指す。俗に“男酒”と呼ばれる灘の清酒や生酛、山廃系の純米酒は、“おし味のある酒”の典型的なタイプ。

酒造米の中では最古参に属する品種で、安政6年(1859年)頃、備前国上道群雄町村の篤農家が偶然見つけた2本の穂を持ち帰り、育成したのがはじまりとされる。大粒で心白が大きく、当時から酒米の優良品種と目されるほか、交配種としても重宝され、山田錦や五百万石などの改良品種を生んだ。草丈が1.8mにも達するために風に倒れやすく、病害虫に弱くて栽培が難しいことから、徐々に生産が減少。一時は「幻の米」と呼ばれるほど衰退していたが、昭和50年代、岡山県の利守酒造を中心とするグループが栽培を復活し、商品化に成功。現在も岡山県南部を主要産地とし、中でも赤磐郡赤坂町(旧軽部村)産の備前雄町が最高品質と目されている。

麹米と対をなす米で、蒸した後に放冷して、直接もろみに仕込む米のこと。原料米全量の約70%を占め、一般米も使用することがあるが、酒質の向上を目指して麹米・掛米の両方に酒造好適米を使う贅沢な造りの日本酒が増えている。

清酒の香りを形づくる主成分のひとつ。かんきつ類やりんごのような華やかな果実香が特徴で、吟醸酒や出品酒に多く現れる。本来は、高精白米を使用して低温でもろみを仕込んだ場合に自然と備わる香りだが、1980年代以降の吟醸酒ブームを受けて、カプロン酸高生成酵母の開発が進行。比較的容易にフルーティーな香りが生成されるとあって、鑑評会出品酒のレベルで見ると、1本あたりのカプロン酸エチルの濃度は全体的に高まってきている。同じ吟醸香の酢酸イソアミル系の香りに比べると、香りのインパクトがより強いことから、鑑評会でもカプロン酸系の華やかな香り吟醸が上位を独占していた時期もあった。現在では、過熱ブームも一段落。過度にカプロン酸エチル系の香りが立つ酒は、「カプカプしてる」との言い回しで敬遠される向きもある。

明治時代、山形県庄内地方の篤農家、阿部亀治により発見・育成された米の品種。明治26年、近くにある神社に参詣した帰途に、周辺に広がる水田に植えられていた在来品種「冷立稲」の中に、冷害に耐えて生育していた丈夫な3本の穂を見出し、持ち帰ったのが発端とされている。譲ってもらった穂は、3年間の試行錯誤の後、明治30年に初収穫に成功。発見者の名前の一字を取って「亀の尾」と命名された。
大正時代にかけて作付面積は飛躍的に伸び、酒造米および飯米の主要品種に数えられるまで普及する。交配種としても盛んに利用され、酒造米では五百万石、たかね錦、若水などの、食用米ではコシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、あきたこまちなどの優れた子孫品種を生み出した。一方で、害虫に弱く、多肥料栽培下では米がもろくなるなどの性質が災いし、昭和以降は栽培が衰退したが、昭和58年に新潟の久須美酒造が亀の尾栽培を復活させ、これを原料米に使った『亀の翁』を製造。その経緯は漫画『夏子の酒』や、これを原作としたテレビドラマで広く知られるところとなり、復活の気運を盛り上げるきっかけとなった。
日本酒において、雑味の有無を表現する専門用語。「がらの良い酒」といえば、どちらかというと淡麗で、口当たりがやわらかく、きめの細かいきれいな酒のイメージ。反対に、五味のバランスが悪く、のどごしのきれが鈍重でだれた印象を与える酒を指して、「がらの悪い酒」などと形容する。

ご存じ、温め酒のこと。燗酒が記録として初めて歴史に登場するのは、平安時代の昔。“燗”の文字は、冷たさと熱さのちょうど“中間”を表すものとされる。
本来は重陽の節句(9月9日)から桃の節句(3月3日)までの楽しみ方とされていたが、昨今では「夏でも燗」を標榜する燗酒党も急増中。温めることでアミノ酸の分解が促されるため、よりふくよかな旨味が備わること、飲むペースがゆるやかになることから、悪酔い防止に効果的なことなど、味わいや健康上のメリットも数知れず。
日向燗(ひなたかん) 30℃近辺
人肌燗(ひとはだかん) 35℃近辺
ぬる燗(ぬるかん) 40℃近辺
上燗(じょうかん) 45℃近辺
熱燗(あつかん) 50℃近辺
飛び切り燗(とびきりかん) 55℃以上
日本酒を燗につけたとき、おいしさが増した状態。どちらかというと、第一印象が地味で硬い酒質の酒に使われることが多く、温めることで冷やでは感じにくいアミノ酸系の旨味が開き、造りのよさが引き出されたときに、“燗上がりする酒”と表現する。一般的には火入れの純米酒や本醸造、酸度の高い山廃・生酛系の酒が燗上がりの代表選手とされているが、熟成をかけた吟醸や生酒が燗上がりに意外な冴えを見せることも。

一度燗をつけた日本酒が冷め、温度が下がった状態。加熱と冷却の過程でアルコール分や旨味が抜けるため、通常は料理酒として使用するが、しっかりした造りの日本酒は冷めても旨味が損なわれないのが特徴。「燗冷ましでも味が壊れないこと」は、酒質の良し悪しを図るバロメーターともいえる。

酒の品質の良否を鑑定・評価すること。「鑑評」という言葉は、もともと酒造業界のみで使われているものであり、辞書などには載っていない造語的表現。明治44年のスタート以来、ほぼ1世紀にわたって行われている「全国新酒鑑評会」のタイトルから、この呼び方が定着していった。“鑑”の一文字が与える厳格なイメージを避け、ハワイのイベントにならって酒を楽しむニュアンスを強調するために、「“歓”評会」のタイトルを掲げている山形県の例もある。

酒税法で定める清酒の製法品質表示基準「単一の製造場のみで醸造した純米酒」を要件的に満たしている酒が名乗れる呼称。当然ながら、アル添酒の場合は「生一本」と表示できない。桶買いの純米酒を瓶詰めして売り出す場合もNG。昔は「最高品質の清酒」といった意味合いをもつ言葉として使われ、灘の酒がその代名詞として「灘の生一本」と呼ばれていた。

酒を色、香り、味の観点から官能によって鑑定し、酒質の良否を評価する方法。従来は、主に全国各地で行われる新酒鑑評会などで格付け審査を行うための手法といった意味合いが強かったが、近年は食品見本市や酒販店や料飲店主催による試飲会を中心に、一般愛好者を含む幅広い層が酒を味見する機会が増え、これらを総称して“利き酒”と呼ぶ習慣が定着している。官能検査としての本来の手順は、まず利き猪口に注いだ酒の色と透明度を見てから、香りをかぎ、口に含んで味わうというもの。口に入れるときは、最初に少量を含んで舌の上をころがして香味を判断し、さらに口先をすぼめて空気を吸い込む方法で鼻から抜ける香りを利いた後、吐き出して口の中に残る後味を検分する。通常の利き酒は、酒質を公正に判断するために15℃前後の常温で行うのが基本。ただし、特定の目的に応じて加温した状態で利き酒が行われることもあり、これを「燗酒唎(かんしゅぎき)」「熱酒唎(ねっしゅぎき)」などと呼ぶ。

利き酒に用いられる専用の猪口。寸胴型の白地の磁器製で、酒の色と透明度を判定しやすいよう、底に藍色の二重丸が描かれていることから、「蛇の目」とも呼ばれる。正式な利き猪口は、直径約8cm、深さ約7cm、容量約200mlのサイズ。これは、鼻が容器の内側にすっぽりと埋まる幅、酒の濁りが判別できる奥行から考えられたといわれる。色味や透明度の印象が香味の判断に影響しないよう、あえて容器の内側を黄色に塗った利き猪口が使われる場合もある。

仕込み水代わりに、あるいは仕込み水の一部に清酒を使用し、発酵させて造る。ルーツは、平安時代に造られていたとされる「御酒(ごしゅ)。発酵後のもろみを漉す→蒸し米と麹米を入れて発酵→濾過、の行程で造られた酒であることが、当時の宮中儀式の規定書「延喜式」にも記されている。
もろみが発酵する初期の段階から高濃度のアルコールにさらされるため、酵母の発酵が抑えられ、そのぶんエキスが残存してとろりと濃厚な甘みが備わる。熟成に向く酒質で、長期貯蔵によって複雑なコクや濃密な旨みが備わったタイプは、ブルーチーズやチョコレートなどと合わせてデザートに楽しむのもおすすめ。
現在の醸造法は、国税庁醸造試験所(現・醸造研究所)が宮中秘伝のレシピを元に開発し、1975(昭和50)年に特許公開されたもの。
酒母づくりの工程において、最も伝統的とされる技法の名称。または、その酒母から造られた酒の呼称。酒母で酵母を培養するうえでは、乳酸が大きな役割を果たすことになるが、「生酛」の酒母づくりでは、米を粥状にすりつぶす「山卸し(やまおろし)」の作業によって、蔵内に浮遊している自然な乳酸菌や酵母菌を取り込み、ゆっくり発酵させる方法がとられる。酵母を十分に培養するまでには1ヵ月近くを要し、品質を一定に保ちにくいことから、より扱いの簡便な「速醸酛」が開発された明治40年以降は廃(すた)れる傾向にあった。しかし、近年は再び人気が復活。しっかりとした酸、濃醇な米の旨味といった本来の生酛らしさを備えながらも、吟醸造りを取り入れたモダンなタイプも多く登場し、新たな食中酒のトレンドとして注目を集めている。
![吟醸[酒]|ぎんじょう[しゅ]](./img/ka_ginjyo_tle.gif)
精米歩合60%以下の米と米麹、水、またはこれらに醸造アルコールを加えたものを原料として、低温発酵の「吟醸づくり」で醸される酒。もともとは、「吟味して醸造した酒」の意味から、明治~大正時代に生まれたネーミングとされる。
醸造アルコール添加のものを「吟醸」、添加なしのタイプは「純米吟醸」と呼び分けるところは、大吟醸と共通。吟醸づくりならではのフルーティーな香気を特徴としながらも、大吟醸より低精白の米で仕込むぶん、コクや旨味の幅が感じられるタイプが多くなっており、年季の入った日本酒党の間では「大吟醸よりも吟醸クラスが好み」という声もよく聞かれる。
独立行政法人「酒類総合研究所」(旧:国税庁醸造研究所)が主催する「全国新酒鑑評会」をはじめ、各地で開催される各種鑑評会で上位入賞を果たした酒。出品酒は蔵元が威信をもって送り出す最高級クラスの大吟醸が中心。鑑評会用として専用に仕込まれ、市場には出回らないケースも多いため、人気銘柄はマニア垂涎の的となる。
相対的には、高精白で香りの高い酒が審査に残る傾向が強く、受賞向きの酒質として「YK35(Y=山田錦、K=協会9号酵母、35=精米歩合35%)」などの言葉が使われることもある。
酒を飲むための酒器の一種。桃山時代後期の頃から登場し、最初は向付の器に使われていたものが酒器に転用されるようになったといわれる。猪口との定義的な違いは明確にないものの、一般には酒器の中でも比較的大ぶりなもの、茶碗に近い素朴さをもつ厚手の陶器製の器を「ぐい呑み」と呼びなわらすことが多い。

酒造りに従事する従業員の総称。伝統的な職階では、杜氏をトップとして杜氏補佐(または「頭」〔かしら〕)、麹主任(または「麹屋」〔こうじや〕、酒母主任(または「酛屋」〔もとや〕)、酒母係、蒸米係(または「釜屋」〔かまや〕)、整備係、係員などの順位が設けられ、杜氏、杜氏補佐、麹主任を「三役」と呼ぶ。最近では、機械化が進んだことや、自ら酒造りの陣頭指揮を執る自社杜氏が増えるなど、一蔵あたりの従業員数が全体的に減ってきている事情も手伝って、各蔵人の分担する職務範囲は広がる傾向にある。

上槽後、加水をせずに瓶詰めした酒のこと。ただし、製法品質基準では、アルコール分1%未満の範囲であれば、加水調整しても原酒と表示してよいことになっている。発酵を止めるタイミングにもよるが、17~18度の高アルコールに仕上がることが多く、さまざまな香味や旨味が凝縮した形で残っていることから、熟成によって変化する味わいの幅が広い。暑い季節には、氷を浮かべたオンザロックもおすすめ。

酒造に使用する米の種類。米麹をつくるために使う「麹米」と、蒸した後で直接もろみに仕込む「掛米」があり、両方に同じ品種の原料米を使用することもあれば、それぞれ別の品種の米を使う場合もある。いずれの場合も、基本的には山田錦、雄町、五百万石、美山錦などに代表される酒造好適米が原料に使われるが、“飯米(はんまい)”と呼ばれる一般米を使うケースもある。製法品質表示基準では、原料米としての一品種の使用割合が50%を超える場合のみ、その品種名をブランドのような形で表示できることになっている。この場合は、裏ラベルなどで使用割合を表示することが義務づけられている。

麹造りに使う原料米のこと。その白米を蒸したものに種麹をふりかけ、さまざまな手入れを行いながら麹菌を繁殖させ、米のでんぷんを糖化することができるようにしたものが米麹である。特定名称酒では、清酒造りに使用する白米の総重量のうち、麹米の使用割合を15%以上に定めている。

原料の中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスを生成する微生物。日本酒の場合は、麹が米の中のデンプンを糖化するが、その糖分をアルコールに変える働き以外に、香気成分を生成する点でも酵母が大きな役割を担っている。昔は、それぞれの蔵に棲みつく「蔵付き酵母」で酒を醸していたが、酒質が安定しなかったり、発酵不良を起こしたりといったリスクがつきものだった。こうした状況の中、明治28年に最初の清酒酵母が発見され、明治から戦前にかけて「日本醸造協会」による優良酵母の純粋培養と供給が進み、品質面でのばらつきは格段に少なくなっていった。同協会で開発された清酒酵母には、実用化され、頒布された順に番号が付けられている。現在、1号から5号までは、すでに頒布が中止されているが、「きょうかい7号」や「きょうかい9号」などの酵母は、現代の酒造りにおいても依然主流をなしている。このほか、各都道府県の試験研究施設から頒布されるもの、蔵元が独自に培養・頒布する清酒酵母もある。
※代表的な酵母の特徴については、別項で順次解説。
酒質を評価する重要な要素のひとつで、複雑な旨味があり、かつ五味のバランスがとれている状態を指す慣用的表現。成分構成の実際よりも、口当たりや飲み込む際ののどごしの心地よさも含め、総合的かつ主観的な味覚作用を表現するために使うことが多い。「コク」と同義語であり、同じ文脈で「にく」「濃醇味」「はば」「ふくらみ」などの言葉が使われることもある。

醸造後、一定の期間にわたって貯蔵・熟成させた長期熟成酒のこと。その条件について、特に法律で定められているわけではないが、全国約50蔵で組織している「長期熟成酒研究会」(http://www.vintagesake.gr.jp/)の自主基準では「満3年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」と定義し、吟醸酒などを低温で熟成させた「淡熟型」、純米酒や本醸造を常温で熟成させた「濃熟型」、低温貯蔵と常温貯蔵を併用した「中間型」の3タイプを設定している。
全体としては、ナッツのような甘く香ばしい熟成香、まろやかな口当たり、酔い覚めのよさなどが特徴として挙げられるが、新酒のときの酒質、保存の温度などの条件により、経年変化もさまざま。同じヴィンテージでも色の濃淡や酸味と甘みのバランス、飲んだ後の余韻まで、千差万別の違いが見られるのが面白いところ。肉料理や乳製品、脂っこい中華料理と相性のよい古酒も多い。
昭和13年、新潟県立農業試験場(現:新潟県農業総合研究所)で「菊水」と「新200号」の人工交配により誕生。昭和32年に、新潟県が米生産量五百万石を突破したことを記念して「五百万石」の名前がついた。現在でも主要産地は新潟県で、県内の酒造好適米作付面積の90%が五百万石で占められる。近年は福島、茨城、栃木、群馬といった北関東エリア一帯、富山、石川、福井などの北陸エリア、京都、大阪、兵庫などの京阪神地区、南は福岡まで、栽培地区も広範にわたっている。大粒で軟質、心白が大きい酒造好適米の特性を備えているが、吸水速度がやや遅く、50%以上の高度精白に耐えにくいため、大吟醸には不向きとされる。酒に仕込んだときの口当たりのやわらかさ、滑らかさが特徴。どちらかというと淡麗系の酒で強みを発揮する。

酒を飲むための酒器の一種。「杯」とも書き、「坏」「爵」「觚」「盞」などの字をあてることもある。広義では猪口(ちょこ)やぐい呑みを含む、酒を飲むための酒器全般を意味するが、現在では儀礼用の三つ重ねの朱塗杯に代表される朝顔状の平盃や、脚付きのゴブレットなど、フォーマルな席で使われる器を総称して“盃”と呼ぶことが多くなっている。古くは、縄文時代や弥生時代の土器が示すように、「かわらけ」と呼ばれる土器の盃が主流だったが、やがてに三々九度の盃のように漆器の大杯が重用されるように。江戸時代以降に居酒屋や晩酌で酒を飲む習慣が広がったことから、陶磁器製の小杯が登場。「銘々杯」の名で庶民の間に普及していったといわれる。

もろみを搾った後、袋に残る搾りかすの部分。たんぱく質、ビタミン、食物繊維などの栄養成分を豊富に含む。最近では酒粕は、その美肌効果にも注目が集まり、健康食品としてはもちろん、化粧品にも使われて引っぱりだこの人気ぶり。形状や原料によって、次のような種類に分けられる。
【板粕(いたかす)】
酒を搾り終わった後のもろみに圧力をかけ、搾りかすを袋から取り出した固い板状の酒粕。できたてにつき、まだしっとりと柔らかく、フレッシュな香りがある。甘酒に仕立てて飲んだり、鍋物、汁物に利用。
【練り粕(ねりかす)】
板粕をタンクに入れて密閉貯蔵し、半年ほどねかせたもの。麹菌が熟成し、糖化が進んで板粕よりも旨味成分が増す。熟成が進むにつれ、ぽってりと練ったような柔らかさになる。漬物や粕漬けの漬け床に最適。地方によって「踏み込み粕」「土用粕」「留粕」「漬粕」などの呼び名がある。
【吟醸粕(ぎんじょうかす)】
大吟醸酒や吟醸酒を搾った後の酒粕。こうした酒では雑味が出ないように、搾り加減をゆるめに抑えるため、粕歩合(使用白米に対する酒粕の重量比)が50%を超えるものもある。米の粒々感が多く残り、フルーティーな香気もたっぷり。白身魚はもちろん、豚バラや鶏もも肉など脂質の多い肉やチーズなどを使った「吟醸粕漬け」は絶品。
日本酒の味を構成する、「甘」「酸」「辛」「苦」「渋」の5つの要素のこと。これらの五味のバランスがよく、調和がとれていることがおいしい酒の条件とされる。ちなみに、辛みについては、塩辛さや刺激的な辛みを指すものではなく、アルコールなどに口の中の粘膜を刺激されるときに生まれる感触のようなもの。渋みは、タンニンのような渋み成分が口の中に入ったとき、舌や粘膜が知覚する痛感のようなものと考えられている。

日本酒の酒質を表す用語のひとつで、粘りつく感じがなく、さらりとキレのある状態を「さばけが良い」といった言い方で表現する。利き酒では、主に酒を飲み込んだ後ののどごし、後口のよさを評価するときに多用するが、酒母や麹の粘り具合を判断する場合にも、「さばけが良い、悪い」という表現用語を使う。

清酒中の旨味を構成する有機酸の量を数値化したもの。有機酸の構成要素としては、コハク酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸などが代表的なところ。それぞれの量を個別に測定することは難しいため、一般的には清酒をアルカリ液で中和し、中性になったときの定量を“酸度”として表す方法がとられている。市販酒では1.0~1.8くらいの範囲に含まれるものが多く、数値が小さいほど淡麗ですっきりしたタイプ、数値が大きくなるにつれ、山廃や生酛に代表されるように、濃醇なコクとキレのメリハリを感じさせるタイプが増えてくる。

酒造メーカー各社で、酒の仕込みに使われている水。ミネラル分を多く含む硬水、塩類の含有量が少ない軟水に分かれ、前者で仕込むと骨格のしっかりした辛口に、後者は口当たりのやわらかい甘口になりやすいとされる。代表的なものに、灘の硬水「宮水」と伏見の軟水「伏水」がある。
蔵があるエリアの天然の湧き水や伏流水、井戸水が使用されることが多く、水の特質が酒の味にも大きく影響する。利き酒会などでは、各蔵元で使用している仕込水が会場に用意されていることが多い。酒を利くのと並行して、いろいろな蔵の仕込水をあれこれ飲み比べてみるのも面白い。
本来は読んで字のごとく、その土地で産出される、その土地特有の酒、の意。京都の伏見、神戸の灘、広島の西条が三大酒どころとされていた江戸~明治時代にかけて、「地酒=名醸地以外のエリアで造られた格下の酒」といった意味合いがあった。
しかし、昭和50年代に起こった第一次地酒ブームを境に事情は一変。主に大手ナショナルブランドに対するローカルブランド的な意味合いが強まり、「良心的な手造りの酒」「個性的な味わいの酒」「希少価値の高い幻の酒」の代名詞的な存在に。今でも「地酒=小仕込みで丁寧に造られる佳酒」「大手メーカーの清酒=大量生産の酒」といったイメージがもたれがちだが、昨今は規模の大小にかかわらず技術が向上し、全体の酒質もレベルアップしている。
妄信や飲まず嫌いで安易な決めつけに走るより、さまざまな酒を手にとり、実際に舌で味わってみることをすすめたい。
機械を使わず、自然重力に任せる方式で搾られた上質な酒の俗称。もろみからぽたりぽたりと滴り落ちてくる様、ピュアで混じりけのない酒質、少量のみしか採取できない希少性の高さを「しずく」になぞらえて命名された呼び名で、かつては、もっぱら鑑評会出品専用酒として門外不出の扱いを受けていた。最近は、少数限定ながら市場にも流通。主に袋吊で採取された酒の代名詞となっているが、槽を使った搾りによるものでも、人工的な圧力を加えずに酒袋の自重のみで垂れてきた酒を「槽掛け・雫酒」として出荷するケースも見られる。

うるち米の中でも、日本酒への醸造適性が高い米のこと。具体的には、大粒で心白が大きい、たんぱく質や脂肪分の含有量が少ない、吸収力と保水力にすぐれる、蒸したときに“外硬内軟”の状態を保ちやすいなどの条件が挙げられる。一般米よりも背丈が高く、倒れやすいことから、栽培が難しい。ゆえに生産量が限定され、値段も高いため、吟醸造りをはじめ比較的高価な酒に使用されることが多い。農産物検査法に基づいて農林水産省が指定した酒造好適米(醸造用玄米)の産地品種銘柄は、平成20年度で延べ177種類。

麹・水・蒸し米の混ぜたタンクで、アルコール発酵を行うための酵母を純粋培養したもの。「酛(もと)」とも呼ばれる。もろみ発酵の過程においては、文字どおり母の役割を担うもので、「一麹、二酛、三造り(もろみ)」のたとえどおり、その工程は酒質の良否と深いかかわりをもつ。酒母造りの代表的な方法は、昔ながらの方法で手間と時間をかけて酵母を培養させる「生酛」法と、あらかじめ乳酸を添加して酵母の育成を促す「速醸」法の2タイプ。加えて、生酛の工程を一部簡略化した方法として、「山廃」がある。このほか、高温で糖化を進め、その後一気に温度を下げて酵母を添加する「高温糖化酒母」の技法も。最初の高温下で野生の酵母菌が死滅するため、添加酵母の特性が反映されやすく、香りのよい酒母造りに適している。
![純米[酒]|じゅんまい[しゅ]](./img/sa_junmai_tle.gif)
文字通り、米、米麹、水のみを原料とし、醸造用アルコールなどの添加を一切行わずに造られる酒。2003年以前は「精米歩合70%」と規定されていたが、2004年以降の酒税法改訂により、原材料の要件を満たしていれば「純米酒」を名乗れるようになった。ただし、精米歩合を表示すること、麹の最低使用率を15%以上にすること、三等以上の原料米を使用することが条件づけられている。
味わいの面では、吟醸酒や本醸造に比べ、より米本来のコクや太い酒質をもつものが多い。酒造会社の個性や持ち味が、最も濃く反映されやすい酒でもある。精米歩合60%以下、あるいは特別な醸造方法で造られた純米酒は「特別純米」を表示できる。
発酵が終わったもろみを搾り、酒と粕に分離する工程のこと。上“槽”の表現は、木製の槽に酒袋を並べる伝統的な搾りの方法にちなむ。機械化が進んだ現在では、大型のアコーディオンのような蛇腹状の装置にもろみを送り、空気圧によって濾過と圧搾を行う連続式自動もろみ圧搾機が主流となっているが、酒の搾りそのものの総称として「上槽」の言葉が慣例的に使われている。

秋に収穫された新米で仕込み、熟成を経ずに出荷される酒のこと。以前は年明け~早春にかけての流通が主流だったが、年内から出荷する蔵も増えてきた。熟成がかからないゆえのフレッシュで溌剌(はつらつ)とした風味が身上で、日本酒を飲みなれない人の口にも合いやすい。
従来は次の年度の酒が出るまでを広義に「新酒」と呼んでいたが、四季醸造の蔵では年度をまたいで「新酒」が造られることもあり、今では冒頭で紹介した定義が一般的なものとなっている。江戸時代には、初物好きの江戸っ子の間で初鰹と下り酒(上方から江戸へ運ばれる酒)の新酒が人気を集め、新酒を積み込んだ船の海上レースも行われていたと伝えられる。
米の中央にある円形または楕円形をした不透明白色部分のこと。酒造好適米に欠かせない条件で、酒造好適米の呼称として“心白米”の言葉が使われることもある。心白が白く見えるのは、でんぷんの組織構成が粗く、隙間が多いために、光線を乱反射することによるもの。この隙間を埋めるように麹の菌糸が入り込んで生育し、中心に向かって繁殖していくことから、いわゆる“はぜ込み(麹米に麹の菌糸が生えること)”のよい状態が作りやすくなる。蔵言葉では「目ん玉」などとも呼ばれる。

兵庫県揖保郡出身の農業家、丸尾重次郎が在来品種「程吉(ほどよし)」から選抜した酒造好適米品種。明治10年、自分の田圃に目立って穂の重い稲が育っているのを見つけ、3本の穂を籾種にして改良を重ねながら、大粒で収量の多い品種に育成したのが、事のはじまり。米質がよく、もろみが溶けやすい特質があることから酒造好適米としても珍重され、明治から戦前にかけて西日本一帯で広く栽培されていた。往時は「亀の尾」「愛国」とともに「日本三大品種」のひとつに数えられていたほど。その後、新品種の登場とともに姿を消していたが、熊本の酒販店、農家、酒造メーカーを含む有志の取り組みにより、1997年に「熊本神力」を原料米とする清酒の生産が再開。「幻の酒米」が半世紀ぶりに復活したとして、注目を集めた。

酒税法上では、「日本酒」と同義(下表参照)。清酒造りの原型と目されるのは、室町時代末期から普及した「諸白(もろはく)」という仕込み法。原料米をそれまでの玄米から白米に変え、麹にする米(麹米)と、もろみに直接仕込む米(掛米)の両方に精白米を用いたもので、当時の高級酒とされていた。
江戸時代には、さらに洗練された味わいに仕立てるため、諸白のもろみを搾った「澄み酒」が登場。これが、今日の清酒に等しいものといわれている。

清酒を製造した時期。醸造した年月ではなく、製品化する目的で瓶詰めを行った年月を表示する。

白米の原料である玄米に対し、精米後の白米が占める重量の割合。米の胚芽や表層部には、たんぱく質やビタミン、脂肪、灰分などが多く含まれ、これが酒に仕込んだときの雑味となりやすいため、精米で取り除く必要がある。当然ながら、パーセンテージの数値が小さくなるほど、酒の原価が上がって高級仕様に。精米歩合30%の大吟醸ともなれば、実に米の7割を削ってしまうわけで、いかに贅沢な造りであるかが知れようというもの。

酒を搾る行程で、終盤に出てくる原酒。伝統的な圧搾法では、酒袋に入ったもろみのあらかたが搾り終わったら、薄くなった酒袋を積み直し、かける圧力を増していきながらさらに高圧で搾る。この過程が「責槽(せめぶね)」と呼ばれるものであり、押し出されてくる酒を「責め」と呼ぶ。香りのインパクトや味のふくらみは3段階の中で最も薄く、アルコール度はより高め。強い圧力をかけて搾るため、一般的には雑味が出やすい特徴がある。「攻め」「押し」「押し切り」などと表現されることもある。

酒母づくりにおける技法のひとつ。明治時代末期に醸造技師の江田鎌治郎によって考案された酒母育成法で、酒母の初期に乳酸を添加する。天然の乳酸菌を取り入れて発酵させる生酛の手法に比べ、気温の影響を受けにくく安定した酒質を得られやすいこと、酒母造りにかかる期間が約2週間(生酛は約1ヵ月)と大幅に短縮できるなどの利点があり、現在、多くの酒蔵では「速醸酛」による酒造りが主流となっている。生酛や山廃に比べると、より香りが立ちやすく、すっきりとした味わいに仕上がる。
![大吟醸[酒]|だいぎんじょう[しゅ]](./img/ta_daiginjyo_tle.gif)
精米歩合50%以下(一粒一粒の米が半分以下の大きさになるまで磨いた状態)の白米・米麹・水、またはこれらに醸造アルコールを加えたものを原料として、低温でゆっくり発酵させる「吟醸づくり」で丁寧に醸された酒。蔵元の技と名誉をかけて造られる、日本酒の芸術品ともいえる。精米歩合30%~40%台のものが主流だが、最近は20%台、10%台まで米を磨きに磨いた大吟醸も登場。総じてフルーツや花の香りを思わせる香気があり、雑味のない洗練された味わいをもつ。白米の重量の10%以下の醸造アルコールを添加したものを「大吟醸」、アルコール添加のないものを「純米大吟醸」と呼び分けている。

杉の樽に貯蔵し、木の香りを移した酒。古くは、お酒は甕(かめ)やひょうたんに入れて貯蔵されていたが、室町時代から江戸時代にかけてノコギリとカンナを使って樽を造る技術が確立したことから、持ち運びしやすい清酒用の輸送容器として一般に普及した。樽の素材で最上とされるのは、香りがよく、木目の均一な吉野杉。杉の木は表皮の白い部分と、中身の赤い部分の2層構造になっているが、香りがより強いのは中身のほう。樽の外側に白い表皮を使い、内側に赤い部分を張った2色仕立ての樽は「甲付」と呼ばれ、見映えのよさからパーティーなどで重用される。

清酒の好ましい風味や口あたりを表現する用語のひとつ。一般的には酸度が少なく、口あたりやのどごしがなめらかな酒に相当する言葉で、しばしば「濃醇」と相対的な文脈で使われる。「きれい」「きめが細かい」などと表現されることも。総じて雑味の少ない清澄な味わいを指し、吟醸造りの清酒全般や、すっきりした飲み口のものが多い新潟酒が淡麗型の代表的存在に挙げられる。

酒を飲むための酒器の一種。盃の一部に含まれるものであり、主に江戸時代以降に広まった陶磁器製の小杯を指す。「ちょこ」の呼び名は「ちょく」から転化したもので、円筒形や釣鐘型の形状が猪の口の形に似ていることから「猪口」の字をあてるようになったとする説が一般的。もともとは「向付」の別称で呼ばれていた器で、ちょっとした酒肴を盛るのに使われていたものが、やがて蕎麦のつけ汁を入れるための器や酒器に転用されていったものと思われる。

酒を燗につけるための金属製の酒器。把手とつぎ口のついた円筒形で、底部に向かってやや細くなっているものが基本形。銅製、真鍮製、錫製などがあるが、熱伝導にすぐれ、冷めにくい特性をもつ錫製のちろりは燗つけに最適とされる。もともとは中国から伝来した酒器で、江戸時代後期から蓋と持ち手が付いた銅製のちろりをヤカンや胴壺に沈め、湯煎で温める湯燗のスタイルが広まった。京阪の一部地域では「たんぽ」とも呼ぶ。

日本酒離れの傾向を受けて、「低アルコールで飲みやすい酒」をコンセプトに開発されたリキュールタイプの日本酒。「低濃度酒」ともいう。日本酒を飲みなれない女性や、アルコールに強くない人でも抵抗なく口にできるよう、アルコール度数を8度~10度程度に抑えたものが主流。フルーツや花の酵母を使用することによってフルーティな香りを添えたタイプ、古代米の使用で美しいピンク色に仕立てたタイプ、ドライなスパークリングを思わせる発泡タイプなど、味わいのバリエーションも幅広い。

酒造りを行う職人集団の最高責任者。直接的な起源は、農閑期の農民や時化で漁ができない漁師が、冬場に酒蔵へ出稼ぎに行くようになったのが始まりとされる。その際、造りに必要な一定の人員数を確保するため、同郷の若い男子を引き連れて集団で蔵に出稼ぎに行くスタイルが定着。江戸中期の「寒造り令」公布で酒造りが冬季に限定されるようになると、季節労働者の集団規模も次第に大きくなり、やがて「○○(出身地)杜氏」の名称を掲げる杜氏集団が形成されていった。酒造りの現場では、蔵の当主といえど口出しをできない絶対的な権限を有し、かつては「二冬で蔵が立つ」といわれるほどの高給を誇った時代も。最近は杜氏の高齢化や後継者不足の問題もあり、杜氏制を廃止して当主や後継者自らが杜氏を務める蔵も増えてきた。名称の由来には諸説があり、酒造りが女性の仕事とされていた時代、古語で「家事一般をとりしきる主婦」の意味をもっていた「刀自」を起源とする説、チームを率いるリーダーを表す「頭司」説などが有力視されている。

清酒の製法品質表示基準により、所定の条件を満たしている吟醸酒、純米酒、本醸造酒の総称。原料や精米歩合、製造方法などの違いによって、「純米大吟醸酒」「大吟醸酒」「純米吟醸酒」「吟醸酒」「特別純米酒」「純米酒」「特別本醸造酒」「本醸造酒」の8種類に細分化される。平成4年に全廃された級別制度に代わる制度として、平成2年から施行がスタート。平成15年の一部改正により、純米酒の製法品質の要件から「精米歩合70%以下」が撤廃されたり、全特定名称酒の要件に「麹米の使用割合15%以上」が義務づけられるなど、商品の多様化に合わせた見直しが行われている。

1年の無病息災を祈願し、年頭に飲む薬酒。漢方の生薬数種類を配合した屠蘇散を日本酒に浸し、砂糖や味醂を加えて甘くしたものを朱塗りの三つ重ねの杯につぎ、年少者から年長者へと杯を回して飲むのが正式の作法。もともとは中国から伝わった習慣で、「蘇(病をもたらす悪霊)」を「屠(ほふ)る」との意味がこめられている。屠蘇散に含まれる生薬の種類には、肉桂、山椒、防風、大黄、小豆、桔梗などが含まれ、胃腸の働きを整えたり、利尿を促すなどの薬効がある。三が日の飲みすぎ、食べすぎが気になる人は、予防薬として飲むのも一興。

酒を盃につぐための酒器の一種。首が細く、胴がふくらんだ形状をもつものが多い。「とくり」ともいう。現代では陶磁製や錫、胴などの金属製のほか、冷酒用のガラス器による1~2合サイズの小徳利が主流だが、江戸時代から明治、大正、昭和初期にかけては、酒屋の店名や商標の入った1升サイズの徳利が広く使われ、現在の一升瓶と同様に運搬容器として使用されていた。俗に「貧乏徳利」「通い徳利」とも呼ばれたこの容器は、店から客に貸し出され、その徳利持参で店に来る客は、買いたい分だけ酒を詰めてもらう方式がとられていた。徳利の語源には、酒をつぐときの「とくりとくり」という擬音に由来しているとする説のほか、朝鮮語で“少し硬い陶器”を意味する「トックル」に因むとする説もある。

斗瓶とは、1升瓶10本分に相当する18L入りフラスコ型のガラス瓶。鑑評会出品酒や特別な大吟醸など、主に袋吊りで搾られた貴重な酒は通常タンク貯蔵をせず、直接斗瓶に採取し、そのまま滓が下がるまで低温で保存。ものによっては、一定期間ねかせて熟成させ、艶やかに味がのるのを待つ。最終的には、斗瓶から直接瓶詰されるが、出荷の際に他の商品と差別化を図るために「斗瓶取り」「斗瓶囲い」などの肩書きをラベルに付すようになった。“雫酒”と同様に、「手間暇を惜しまずに造られた最上級の酒」を表すキーワードといえる。



