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淡麗辛口から濃醇を経て今、時代は 「食中旨口」 へ

日本酒があれこれ語られるようになったのは、1985年以降の「地酒ブーム」に端を発する。当時はまだ特級酒、一級酒、二級酒とアルコール度数による酒税率によって格付けがなされていた時代で、地方の酒の中にはその銘柄力の弱さから酒類審議会を通れないものも多くあり、それらが二級酒として売られていたことに起因する。頃はバブル成熟期。安くて旨い地酒の存在は自慢気に語られるようになり、万人に広く愛されるおいしさをもつ全国区の酒に打って出た新潟県や長野県の“淡麗辛口”の地酒は、瞬く間に時代の寵児に。そしてこのすっきりとした喉ごしのよい酒が、日本酒の風味が実は豊かだったことに気づかせてくれ、若者や女性ファンを増やしたのである。

それを受けて次にやってきたのは「大吟醸ブーム」である。すっきり感にプラスされたインパクトのある“芳香辛口”な旨さ。それは濃厚な味わいだったり、印象的な香りだったりし、吟醸造りという特別な醸造方法があることを多くの人が知る絶好の機会ともなった。

その後、92年に級別税制が撤廃され、酒の等級表記は昭和の遺物となる。そんな90年代にじわじわと広まり、一過性ではない支持を集めてきたのは、酸が高めでコクのある“濃醇旨口”の日本酒である。米の旨味を感じる純米酒の人気が高まり、無濾過、生原酒、生酛(きもと)(濃厚タイプ)、古酒など、蔵や杜氏の個性をも感じられるバラエティーを楽しむ時代となる。

そして現代。空前のワインブームや焼酎人気などを通して学んだこともあり、今、酒に求められているのは料理と一緒に楽しめるキャラクターである。存在を主張しすぎず、おいしい酒。料理と好相性を奏でる旨口タイプ。飲み飽きしないやわらかさ。米の骨格が感じられる丁寧な風味。これらを集約すると「食中旨口」、すなわち食中酒なのである。

松竹梅「白壁蔵」<生酛純米>。640mℓ/1180円、1.8ℓ/2615円(参考小売価格)。後方は生酛造り用の昔の道具、暖気樽。


もちろん“濃醇旨口”の中には食中酒に向く酒もある。しかし、少し重かったり、香りが高すぎたりするものも多い。そんな中、2008年の秋に発売された松竹梅「白壁蔵」<生酛純米>も、時代の声を受けて食中旨口な酒質を徹底的に追求した酒である。今回のミッションでは松竹梅白壁蔵で生酛造りを学ばせてもらうこともあり、メンバーには事前にこの酒を送付。家庭で味わってもらった。

「1週間、いろいろな食材、料理で味わってみました。ワインも日本酒も、必ず合わない食材があるのですが、
この酒にはなかった。これは発見でした」(礒部安志さん・香保里さんご夫妻)

「最初は物足りなさを感じたが、行儀のいい味わいの酒だと思う」
「仲間と一緒に味わったところ、すぐになくなってしまった。飲みやすさにむしろ怖さを覚えた(笑)」
(兼平綾子さん&峯岸由佳さん)

「これを味わった後で好きな酒を飲んでみたら、その酒の印象がまったく変わってしまったことにショックを受けた」
「冷蔵庫から出した直後はすっきりとしていて、徐々に温度が上がるにつれパンチが出てきた。
その味わいの変化にも魅力を感じる」(澤田明子さん&坂本佳世子さん)

「日頃愛飲している酒と飲み比べてみた。最初はインパクトが薄いなぁと感じたのですが、
飲み進むにつれて普段味わっていた酒のほうがむしろヘビーな風味をもっていたことに気づき、その事実に驚いた」
(西村隆さん・真由美さんご夫妻)

「うちでは比較的濃い味つけの料理が多く、生酛によってはえぐみを感じる印象になることがあったのに、
それを感じさせないやわらかさがある。生酛造りだけど、新しいジャンルという印象」
(浜田貴光さん・真由美さんご夫妻)


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