こうして活発に意見交換がされる中、多くの賛同を得たのが五百万石の山廃純米に対する素直な感想だった。「共働きなので夕飯はちゃっちゃとつくれる肉料理が多くなってしまうのですが、この酒は肉料理に負けない力強さがあります。うちの定番の酒にしたい」(廣澤明子さん)という暮らしに根ざした視点からのもの。酒の肴というと刺身や焼き魚など季節の魚をまずイメージしがちだが、実は三谷杜氏の好物は肉。「肉のおかずで燗酒をやるのが、毎晩のちょっとした幸せ」なのだそうだ。しかも、すき焼きやしゃぶしゃぶなどの晴れがましい料理ではなく、奥様の富子さんがつくる“普段の肉おかず”が一番おいしいし、酒にも合うと笑う。
もしかしたら、三谷杜氏の「より多くの人に」と願って酒に込めた想いが、その味わいを通して日本酒委員会のメンバーに伝わったのでは!?と思えるような偶然。これまた驚きである。



ところで、もう一つの大事な使命である稲刈り。自分たちで植えた稲を鎌で刈る。三谷杜氏は、7月の長雨と8月の猛暑で実入りが心配だったそうだが、ぷっくりとふくらんだ穂先が重い。籾に包まれている一粒一粒が愛しい。3~4株ずつを藁で束ね、稲架(はさ)にかけて干す。
一通り終えて川で泥を洗い流していると、田植えのとき同様、三谷杜氏から差し入れが届く。富子さんがつくった三谷家定番の肉おかず「じゃぶ煮」は鍋ごと登場。それは“肉じゃが+肉豆腐+すき煮”といった料理で、初めて味わうのに誰の舌にも懐かしくて優しい。今回の「いただきレシピ」に決定。煮汁すら残らなかったことは言うまでもないだろう。
現代の家庭料理には肉も魚も野菜も欠かせず、和洋中も折衷。それが日本の食卓だ。そして食中酒はそうしたシーンで味わう。肉料理がよりおいしくなる酒なんぞ21世紀的ではないか。委員会の活動は次回、松竹梅白壁蔵での酒造りに続く。






